胎動
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「!」
キバナが突然足を止め、スッと手を離した。
「あ・・・」
そのことに一瞬驚いたがその理由はすぐにわかった。
「見ろ、ナツキ、お前運がいいな。ヌメラの群れだ・・・!!」
「わあ・・・!!」
ポケモンを驚かさないように大声ではないが、キバナはとても興奮した様子でそういった。
「あいつら雨降んないと出てきてくんないんだよ。人懐こい個体が多いし、いってみねえ?」
「うん!」
キバナに勧められるがまま、ナツキはデンリュウと共にヌメラたちに近づいてみた。
「ヌメー」
「わ・・・!」
特に人懐こい個体が数匹近づいてきた。その可愛さにナツキは思わず頬が緩んだ。
「見て!キバナくん!可愛い子たち来てくれた!!」
「お、おう。よかったな」
ナツキがはしゃぐ様子を見て、可愛いと感じると同時に連れてきて良かったとキバナは思った。
「捕まえねーの?」
「そろそろ新しい子育てたいとは思ってたけどどの子にしよう・・・・・やっぱり、バトルが好きな子がいいよね」
「パル!」
ナツキの呟きを聞いたデンリュウはヌメラたちに何か声をかけ始めた。
「なに話してんだろうな」
「バトル好きな子を探してくれてるみたい。前にもそんなことあったから」
すぐにお目当てのヌメラを見つけたのかデンリュウは少し離れたところからゆっくり歩くヌメラを気遣いながらナツキの元へ連れてきた。他の個体よりも一回り小さなヌメラだ。
「一緒に来たいならデンリュウと一回バトルしてみる?」
「ヌメ」
ナツキが屈んで目線を合わせて尋ねると、ヌメラは小さな声で返事をした。おとなしい子のようだ。
「じゃあオレが掛け声をかけるからそれでバトル開始な。いくぜ・・・バトル開始だ!」
キバナの掛け声と同時にヌメラはみずでっぽうを繰り出した。
「デンリュウ、よけて!かみなりよ!」
「パル!」
ナツキもいつも通り応戦し、勝敗はすぐに決した。
「ヌ、ヌメ〜・・・」
「パルル!」
ヘトヘトになったヌメラにナツキはモンスターボールを投げた。
「よし!ヌメラゲット!」
そして手当のためにすぐにヌメラをボールから出した。
「もう痛くない?これからよろしくね!」
「ヌメ」
「仲良くなれそうだな。ヌメラも良かったな。ナツキは世界一のトレーナーなんだ。お前もすぐに強くなれるぜ」
キバナの言葉を聞いたヌメラはキラキラした目で嬉しそうにナツキを見上げた。
「まあ俺様はそんなナツキに勝った唯一の男だけどな」
「ヌメ〜」
「そ、その後一回勝ったよ!」
キバナをさらに尊敬した目で見つめるヌメラを見てナツキは慌ててそう告げた。
「ハハ。そうだな。喝入れてもらったんだった。そんで・・・」
キバナの顔がだんだんと赤くなったことに気づいたナツキはその意味を察した。
そうだ、あの時抱きしめられたんだ。
雨で体は冷えているはずなのに顔が熱い。きっと自分もキバナ君と同じかそれ以上に真っ赤になっているはずだ。
「ヌメ?」
「あ!か、帰ろっか!ヌメラ、みんなにバイバイしておいで」
ヌメラの鳴き声で我にかえり、その場の空気を誤魔化した。
「あ、じゃあせっかくだから写真撮ろうぜ!」
同じく何かを誤魔化すようにキバナはそう告げ、ナツキ、デンリュウ、ヌメラとその仲間たちを一箇所に集めた。
「撮るぜ!3、2、1、」
パシャっという音と共にキバナは自分のスマホロトムでナツキ達を撮影した。
野生のヌメラたちに別れを告げ、ナツキは新たな仲間を迎え、帰路に着いた。雨はまだ続いている。デンリュウは疲れてしまったようで、ボールの中だ。
先導するフライゴン、そしてキバナとナツキは、雨の中のワイルドエリアをゆっくり歩む。
左手が冷たくなっていることに気づいた。
ここに来るまでは、キバナの手に包まれていた左手が。
「・・・疲れてねーか?」
「え!?あ、うん。だいじょっ・・うぶ」
大丈夫と言おうとした矢先、少しだけぬかるみに足を取られた。転びそうになるほどではないが、ただただ恥ずかしい。
「危なっかしいな」
優しく目を細めるキバナに、なぜだか胸がドキりと脈打った。バトルのときの好戦的な笑みとも、ジムトレーナーと談笑している時との笑顔とも違う、その微笑から目が離せなかった。
「疲れたらちゃんと言えよ?」
そう言ってキバナは再びナツキの手を取った。
「わ、」
「冷えてんな。帰ったらすぐあっためとけよ」
「うん・・・」
肌寒いはずなのに、やっぱり体の熱は引いてくれなかった。