決勝リーグ
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それからもしばらく攻防が続き、フィールドが砂煙にに包まれる。煙が晴れ、そろそろ決着がついたのでは、と言うときだった。
両ポケモンが今にも倒れそうなダメージを負っている。
「倒れるなよ!ジュラルドン!意地を見せやがれ!!」
ドスーーーンと一つの大きな体が倒れた。
『あああーーー!!先に倒れたのはナツキ選手のガブリアス!!よって勝者はキバナ選手だーーーー!!!!』
「ガブリアス!!!」
実況の叫びが終わる前に、ナツキはガブリアスのもとへ向かった。
「ああ!大丈夫!?ごめんなさい!無理させたわ!!」
「ガブ・・・!」
ナツキのせいではない、と悔しそうな表情をして、ガブリアスはモンスターボールの中へ戻っていった。
一呼吸してナツキは立ち上がり、フィールドの中央にいるキバナの元へ向かった。
「・・・最高のバトルだった。すげー楽しかった」
「私も。・・・・・すっっっごく悔しいけどね!!でも、本当にこんなバトルは初めて。私たち、バトルスタイルが似てる気がして、駆け引きっていうか、、とにかくすごくワクワクしたの!次は負けない!」
「俺様だって負ける気はねーよ」
大柄なキバナと小柄なナツキが固く握手をする。非常にアンバランスな二人であったが、観客は彼らのバトルを大きく称えた。
「すげー良かったぞーーーー!」
「めちゃめちゃ見応えあった!」
「キバナ様ーーーー!」
「ナツキちゃんも良かったぞーーー!」
ナツキは不思議な気分に包まれた。今までの試合でも応援してくれる者たちはいたが、彼らの応援が初めて自分に届いたような気がした。
(多分、変わったのは、私だーーーーーー)
苦い思い出から応援されること、好かれることが怖かった。声援もいつか狂気に変わるのではないかと疑うことしかできなかった。しかし今、初めて彼らの声援が自分の中にストン、と落ちたような気がした。
ああ、こんなにも応援してくれてたんだ、とこの大会で初めて、客席を見回した。
「・・・・・俺は、この瞬間が好きだ。すげー頑張ろうって気になる。ま、煩わしいことも多いけどよ」
キバナはナツキの変化に気づいたのか、公式戦の楽しさを思わず口走っていた。
「・・・うん・・・・うん・・・・・。そうだね。どうして、気づかなかったんだろう・・・・・・。きっと、カントーやジョウトでも応援してくれた人がいたんだよね・・・・・・」
負けてしまった。悔しい。でもそんなときだったからこそ気づけたのかもしれない。
どうしてあのとき自分は逃げてしまったのだろう。
どうして悪い面しか見れなかったのだろう。
「ナツキ、お前、自分で言ってたろ?」
「え?」
「大事なのは、次どうするか、だぜ」
今までどこか失くしていたピースがカチリとはまったような気がした。
「ありがとう。キバナくん。私、やっぱりバトルが好き。・・・大好き」
「!!」
心からの笑みをキバナに向ける。キバナはその言葉がポケモンバトルのことを言っていると分かっていても、なんだか自分に言われているように錯覚してしまって、赤面してしまった。
しかもここはスタジアムのど真ん中。二人が握手を交わす映像は、大画面の液晶に映されている。
「あれ?キバナ様顔赤くない?」
「マジかよ!まあナツキちゃん可愛いからなー」
「キバナに取られるのは無理!!!」
「えー!キバナ様うそでしょ!?」
キバナは観客のその様子に気付き、すぐさまナツキの手を離し、顔の前で手をブンブンと振り、否定した。
「ちげーっ!冷やかすな!お前ら!!!」
「みんなどうしたの?」
なんだか会場の空気が変わったが、何が原因かはキバナよりもだいぶ背が低いナツキにはわからなかった。
そして、バトルが終わったので退場しようとするナツキをキバナは呼び止めた。
「あ、待てって!」
「え?」
キバナはスマホロトムを取り出した。
「記念写真とろーぜ」
「え?いいけど、、私もキバナくんも砂だらけだよ?」
両者ともに砂嵐を使うポケモンを持っているため、その影響でお世辞にも二人は綺麗と言える状態ではなかった。
「それがいーんだって!ほら!カメラ見て」
『撮るロトー』
ロトムの声に合わせて、カメラを見てナツキは笑顔を浮かべた。
「よし!お!上手く撮れてるな」
「見せて」
キバナの手のスマホロトムを覗こうとナツキは背伸びをする。その様子が可愛らしくて、キバナは顔を手で覆った。
「お前、、わざとか?」
「え?」
「いや、なんでもねえ。・・・ほら」
ナツキが見えるようにロトムを持っていた手の位置を変える。
「あはは!泥だらけだ!この写真私にも送って!現像する!」
何かが変わったこの瞬間を収めた写真を大事にしたかった。昨今、よほど大事な写真でなければ現像はしない時代で、この発言はさらにキバナの心を掴んだ。
「お前やっぱりわざとだろ・・・」
「え?」
「いや、もういい・・・・・。ところでこれ、ポケスタにあげていいか?」
「ポケスタ?写真のやつだよね?いいよ別に。ファンの子とか怒ったりしないなら」
「時々バトルの後に撮るからそんな問題ねーと思う。まあ、そう言うのもゼロじゃないかもしれないから、嫌ならやめとくけど・・・・」
キバナの言葉にナツキは感心してしまった。確かに何をするにしろ大勢のファンが100%肯定的な意見を言うわけがない。プロのトレーナーなのだと改めて実感してしまった。
「キバナくんが気にしないんだったらいいの。好きにしていいよ」
「じゃあそーするぜ。っと、そろそろジョーイさんとこ行くか。俺のポケモンもナツキのポケモンもだいぶダメージ喰らったしな」
その日はこうして幕を閉じた。ナツキもポケモンもこの日は泥のように眠った。