決勝リーグ
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「はあ、なんだよこれ・・・・・・」
本日は第5試合、ダンデとダイゴの対決だ。そろそろ試合観戦に行く時間だが、キバナは家で沈んでいた。
SNSのポケッターで、トレンド上位入りしているワードが軒並み、ワタルとナツキ関連だった。
#ナツキの涙の意味 #ワタルとナツキ #幼馴染萌え etc.
「あいつらできてたりすんのかな〜」
「ジュラ」
早く行こうよとジュラルドンが急かしてくるが、ナツキとワタルの関係がどうしても気になってしまう。昨日のバトルの後、二人はフィールドで何か言葉を交わしていた。客席まで声が聞こえることはないけれど、よくあることだからそこまでは気にしていなかった。しかし、会話の後、ナツキは涙をこぼしたのだ。嬉し涙に属するものだろう。
何か二人の間には、恋人であってもなくても強い絆を感じてしまった。
「どうしよう、ジュラルドン。俺様すごい嫉妬してる・・・・・」
「ジュラ!」
いいから早くダンデのバトルを見たい、と言うようにジュラルドンはキバナを玄関まで引きずっていった。
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『メタグロス!戦闘不能!勝者!ダンデ!!!』
まるで約束されたかのような勝利に会場が盛り上がる。せっかく、ダンデと強者のバトルが見れたと言うのに、キバナはワタルとナツキのことが気になってあまり集中できなかった。
「・・・・明日試合なんだけどな・・・・」
「ジュラ!!!」
身の入っていない様子の主人にジュラルドンは怒っていた。
明日の第6試合はあろうことか、キバナ対ナツキだった。しかしこのままでは絶対に負けるだろう。
「ジュラ!ジュラ!」
「お前、まさかナツキに直接きけとか言わねーよな」
ジュラルドンはそのまさかだ、と言うように返事をした。
「・・・・・確かに俺もこんな気持ちでナツキ相手に勝てるとは思わないけど・・・・・・・・はあ。わかったよ。はっきりしてくればいいんだろ!」
「ジュラ!」
重い腰を上げた主人にジュラルドンは満足そうにして、ボールの中に戻っていった。ジュラルドンの言い分(?)はもっともだし、キバナだって明日の試合は集中して勝ちたいと思っていたから、思い切ってナツキに連絡することにした。
(まだ、スタジアムにいるかな・・・)
ナツキだってこの試合をどこかで観戦しているはずだ。今から会えるかメッセージで尋ねると、ちょうどタイミングがあったのかすぐ返信が来た。
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いいよ。
スタジアムだと目立つから、ナックルシティでいい?
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キバナは「了解」と返した。ワールドリーグカップの会場であるシュートスタジアムにはおそらくずっとマスコミやファンたちがうろついているだろうからそれには賛成だった。ナツキはともかく、キバナは背も高いため非常に目立つ。
裏口からフライゴンに乗ってナックルシティへと向かった。待ち合わせ場所にしたナックルスタジアムの前に降り立つと、そこにはちょうどアーマーガアタクシーから降りるナツキと彼女のルカリオがいた。
「ナツキ!」
「キバナくん。ちょうどだね。明日は試合だけど、どうかしたの?」
不思議そうにキバナを見つめるナツキ。
「あー、ちょっと聞きたいことがあって・・・・・あ、飯でも食いながらにしねえ?」
「え?うーん、ごめん。大事なバトルの前日は外食はしないの。この子達の食事はちゃんとしないといけないから」
そう言ってナツキはルカリオを目を見合わせた。キバナはしょうがないことだが食事の誘いを断られてしまい、少しショックを受けた。
「あー、そうだよな。悪かった・・・」
「お話しするくらいだったらいいけど・・・」
ナツキも誘いを断って罰が悪そうにそういう。キバナは自分が聞きたいことは一つだけなのだから、一瞬で終わることだとわかっていても内容が内容だけになかなか切り出せない。
「その、ポケッターってやってるか?ちょうど、ナツキがトレンド入りしてて・・・・・」
「私SNSはメッセージアプリ以外何もしていないの。私がトレンド入りって?」
「・・・・・・・昨日、ほら、試合の後にさ、泣いてたろ?あれが、なんでかなって話題になってて・・・・俺も、それが少し気になって・・・・・・・」
本当は少しどころではないのだがそれは言わないでおいた。
「あぁ。私もよくわかんないや。ただ・・・今こうやって大きな舞台でバトルができるのもワタルのおかげだなって思ったら感極まっちゃって。バトルもいいバトルだったし、嬉しさと達成感でつい、ね」
「そ、そうか」
「聞きたいことってそのこと?大丈夫だよ。悲しくて泣いたわけじゃないから」
ナツキはキバナに心配をかけたのだろうと思った。しかし勝利の後のあの涙が悲しくて流されたものだと思う人間はいないだろう。キバナは本当に聞きたいことを、ついに聞いた。
「・・ナツキと・・・ワタルって・・・付き合ってたりするのか?」
キバナの思わぬ質問にナツキは目を丸くさせた。もしかして聞きたかったのはそのことだったのか、と思った。
「ううん。幼馴染だよ。兄弟みたいな感じだから恋愛対象として見るにはもう無理かな。それに、ワタルってデートとかにもあのマント着てきそうで嫌だし」
今度目を丸くさせたのはキバナだった。ナツキは一切照れるでもなく、本心からそう思っているように見えた。そして一瞬の瞠目の後、言葉の意味を理解して吹き出した。
「プハッ!ま、マントな!確かにドラゴン使いのマントはあんまりな!」
腹を掲げて笑い出すキバナに、ナツキは内心でワタルに謝っておいた。マントへの苦言は実はものすごく本心で、これまでに何度かやめたほうがいいのではないかと本人にも言ったがどうもそこは合わないようだった。
「それにしても、その質問よくされるの。特にドラゴン使いの人に。大丈夫だよ。ワタルは女の人にだらしなかったりするような人ではないから」
「・・・・・・・・・・」
ああ、これは勘違いをさせているな、とキバナは察した。確かにドラゴン使いの多くはワタルを崇拝しているから、ワタルが女にうつつを抜かしているかも、なんて知ったらナツキに詰め寄りそうだ、とキバナは思った。
否定したら自分の気持ちがバレてしまうし、ワタルを尊敬していることに違いはないから、とりあえずはそのまま勘違いさせておこうとキバナは決めた。以前リョウタがナツキは鈍そうと言っていたが、本当にそうらしい、と安心半分落胆半分で実感した。
「確かにそういうことが気になるとバトルに身が入らないってこともあるしね!前に約束した通り、ご飯は決勝が終わったら食べようね。明日、いいバトルを!」
「おう」
キバナの憂いは晴れた。明日のバトルはこれで全力を出せる、と思った。