第4話

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書類整理をするの視線の先には、髪の毛が乱れて目の下に隈をつくっている鬼灯がいた。

「………………」

朝からずっとこんな調子だ。

目つきの悪さが寝不足によって、さらに険悪になっている。

「鬼灯さん、巻物落ちちゃいます」

「あ、はい」

ずり落ちそうにある巻物を支えるべく、慌てて両手を差し出す。

「どうしたの、鬼灯君」

「昨夜ちょっとさんとハッスルしてしまって」

「一度だってアンタとハッスルした覚えはないよ」

「君たち本当に仲良いよね。これで付き合ってないという事実の方がおかしいよ」

苦笑しながら閻魔が言うと、は涼しげな美貌でばっさり斬り捨てた。

「死んだら偶然出会ったあの世の鬼(イケメン)に気に入られて嫁にこいと言われるとか、妄想にしても漫画にしてもあまりに低クオリティすぎます。よって却下です!」

「ずっとこんなふうに断られているんですよ」

鬼灯は呆れたふうに肩をすくめ、どことなくぶすっとした表情で訴える。

(ちゃんを奥さんにするのは難しそうだね……頑張れ)

願いが成就するには難しい部下の恋の行方をひそかに応援する。

「え~~不眠は肌によくないよ、ハゲるよ」

「お前がハゲろ」

眠そうに目を擦りながらも、閻魔の暴言は忘れない。

「ハ…ハゲるもんか」

「あ、これから桃源郷へ行ってきます。注文していた薬ができたようなので」

「ああ、君は和漢薬の研究もしているんだっけ?お疲れさん、薬ってことは白澤君に会うんでしょ?あのコ、君と似てるよね。顔つきもだけど、小賢しい所がさ」

閻魔の口から知らない名前が出てきた。

首を傾げて訊ねようとして、

「うわ」

が鬼灯の顔を見ると、案の定、彼の表情が物凄い勢いで険しいものへと変化しつつある。

「それ、よく言われますけど酷く屈辱です」

「鬼灯さんに似てる人がいるの…?この世に鬼灯さんは二人もいらないけど」

「最近、口の悪さが目立ってきません?」

鬼灯は抗議するが、勿論は無視。

「桃源郷…」

桃源郷――一度は耳にしたことのある、地獄とは反対の場所(天国)だ。

(あたしは一度も行ったことないけど)

「どうせなら一緒に行っておいで。ちゃん、桃源郷行ったことないんでしょ?」

「――え?いいん…」

「絶対にダメです」

顔を輝かせた途端、鬼灯に止められてしまい、眉を寄せて訊ねた。

「何でですか、仕事はほとんど片付けたじゃないですか」

「大王、余計な事を言わない!!あいつの性格をご存知でしょう?」

「桃源郷行くのも勉強」

「余計な勉強までするハメになりますよ」

「好奇心には勝てない、お願いです、連れてって」

絶対に折れないと言わんばかりの鬼灯に、パンと両手を合わせた。

しばらく頼み続けていると、仕方ありませんね、と言いながら深い溜息をついた。

「いいでしょう。ただし、はぐれないでくださいね」

「迷子じゃあるまいし」

「自覚なしですか」

「そっちこそ。変態上司のくせに」

この後、彼女の頭が殴られたのは言うまでもない。







蒼穹は爽快に雲を疾駆させ、山麓さんろくは一望の深緑を敷いている。


――あの世絶景100選の一つ、桃源郷。


その澄明な風光の中、鳥も共に踊る緩やかな坂を登る鬼灯との他に、桃太郎の家来達も歩いていた。

「誘ってくれてありがとう、鬼灯様!様!桃太郎、元気かなぁ」

「わあ!さすが観光名所!」

「建物は中華だな」

観光名所なだけのことはあり、空気は澄み風景は綺麗だ。

建物は中華風だが、地獄も中国地獄を参考にしていたところがあるので大差はない。

「ここは日本と中国の境にあるのです。ですから双方の交易の場にもなっています」

「あ、そーなんだ」

「――で…何しに来たか、わかってますよね?」

一番言う必要のある相手のにそう言ったのは、彼女が大はしゃぎで景色を眺めていたからだ。

「わあ……!」

小鳥のさえずり、色とりどりの花。

中国との境にあるだけあって、建物は中華風だ。

(池の水が澄んでる!血の池じゃないし、亡者の叫び声も聞こえない!山も針山じゃなくて森林だ!)

門で隔てただけの世界とは思えない格差。

(ホントならあたしはここに来るはずだった……うーん、迷うなぁ…)

「ちゃんと見張っててください。彼女は目を離すとフラフラとどこかへ行ってしまって、はぐれてしまいますから」

『はーい』

見張りを任された三匹は元気よく返事した。

すると、中国というキーワードからシロは食べ物を連想する。

「じゃあ、小龍包しょうろんぽう、食べ放題?」

「……何で中国イコール小龍包食べ放題となるんですか」

ちなみに目的地へと向かう間、何度もがはぐれて足止めを食らったとか。







――桃源郷、仙桃農園。


草原に囲まれた長い一本道を歩いて辿り着いた先に、一軒の家屋がある。

「ああ……天職が見つかるって素晴らしいなあ……俺…今まで何であんなに愚かだったんだろう……心なしか、イケメンになった気もする」

仙桃の果実を収穫する桃太郎は、昔の過ちを懺悔する。


――日本一有名なヒーロー:桃太郎(1話目でチンピラから見事社会人へ)。


(わざわざムダな喧嘩ふっかけて……俺、イタい奴だったな……)

背中の籠に仙桃を入れて収穫を終えると、小屋の扉を開けた。

「白澤様、仙桃の収穫終わ…」

瞬間、裾の長い漢服を纏った女性に投げ飛ばされ、

「ウァチョオオオ」

白頭巾を被り、漢服の上から白衣を着る男と桃太郎はぶつかった。


――痛いッッ!!!


そのまま怒って帰る女性に投げ飛ばされた男は、逆立ちの体勢のままつぶやく。

「……イヤ、ホント、怖いよね、女の子って」

「…シャチホコみたいになってますよ……」

しみじみつぶやく男――白澤に、桃太郎は打たれた頭をさする。

「あ、仙桃?獲ってきてくれた?謝々シェシェ。ありがとね」

「はい……」

この時点で先程の修羅場が容易に想像でき、顔を青ざめる。

「俺がここへ来てから実に8人目の女性を見た気が……」

「違うよ、厳密に言うと9人だよ。おかしいよね、ウサギは年中発情しても怒らないのに、僕だと女の子は怒るんだ。同じプレイボーイなのにね」

真っ昼間からこの会話である。

人気ブランドのロゴマークとかけるが、桃太郎は否定する。

「いや、一つもおかしくないです」

「あ、ゴメンね。怪我は?」

「あ、大丈夫です、スミマセン」

ぶつかった箇所に付着したゴミを払うと、頭に乗っかった葉を手に取る。

「この葉っぱ、何だかわかる?」

「…何だろ。あ、ホオズキ?」

「そう!」

彼の答えに白澤が、まるで辞書を読んでいるかのごとく知識を並べた。

「根っこは生薬。鎮咳剤ちんがんざいや利尿薬になる。『酸漿』又は『鬼灯』。英名Chinese lantern。[#ruby=鬼_グォイ]は中国語で幽霊のこと。『亡者が持つ赤い提灯』ってこと。だけど、毒でもある。微毒だけど。昔、遊女が堕胎薬として服用していたこともある。妊婦さんは食べちゃダメ」

「その通り。アルカロイド及びヒストニンを含みますので、流産の恐れがあります」

「そうそう…」

振り返った途端、腕を組む鬼灯の姿に絶反応を示して嘔吐した。

「もっとも貴方は、たらふく食って内臓出るくらい腹下せばよいのです」

「伏せろ!コイツは猛毒だ!!!」

嫌悪感も露に物凄い形相で顔を歪めて、

「豆まけ、豆ッ!!」

と鬼退治に必要な豆を連呼する。

「えっ…あ、鬼灯さん」

遅れて、はぐれたを連れてお供達がやって来た。

「鬼灯様ー、様見つけましたー」

様ー。早く、早くー」

「えー、もうちょっとあちこち見たいのにー。意地悪ー」

白澤が女子の声に反応し、辺りを見回す。

「ん?女の子の声…?」

は鬼灯の後ろから出て、白澤に挨拶する。

「初めまして。閻魔様の第二補佐官をしております、と言います。貴方が白澤さんですか?」

綺麗な顔立ちをした少女が、白澤の視界に飛び込んできた。

長い茶髪のようだが、淡い色合いに輝き、和服をモチーフにしたような衣装に目を惹かれたが、白い肌と相まって人形を連想させた。

いつまでたっても返事が来ないことに首を傾げれば、艶やかな髪が肩を滑り落ちていく様は、サラサラと音が聞こえてくるかのようだった。

「よろしくねっ、ちゃんっ!それにしても、すらっと手足が長くて綺麗だなぁ!」

「……一般的な身長に比べると、背が高いので……」

改めてを上から下まで観察する。

容貌は17、8歳くらいのはずなのに、纏う雰囲気にはらしからぬ色気すら含まれており、赤いリボンでポニーテールにされた髪型が幼さを感じさせつつも、名前の通り凜と帯びた瞳に少女を脱却させる艶めいた雰囲気を滲ませていた。

原石がここにいた。

「直ぐにでも食べちゃいたいくらいだよ」

無意識のうちにの手を握っていた。

何事かと目を白黒させるにお構いなく、その小さな肩に手を置いて正面から見つめた。

「あ、あの……」

「白豚、今すぐ彼女から半径500メートル離れなさい」

鬼灯の瞳に、ぎら、と灼熱の炎が宿るが、問題ない。

彼女は必ず連れ帰る。

「あと数年もすればとんでもない美女に成長するだろうね。いやあ、今から楽しみだ」

「……なるほど。身長も顔も、こういう冗談も鬼灯さんそっくり」

「いい度胸です。私を貶すとは」

「こっちの台詞だ!!さぁっ、あんなの放っておいて僕と……」

照れているのかと思ったが、本気で迷惑そうである。

しかし、そんなことでめげる彼ではない。

隙あらば口説き落としてやろうと心に決めた。

その時、背後にいた家来達が、

『あ』

と声を揃えた。

反射的に仰け反ると、風切り音と共に白澤がいた箇所に凄まじい速度の斬撃が走る。

いつの間にか、木刀を握ったが、先程までのオドオドした印象とは様変わりし、しっかり地面を踏みしめる。

「初対面にしては近すぎますよ…少し、離れてくれませんか」

背筋に悪寒が走り、冷や汗が流れる。

(マズい、太刀筋が見えなかった。次に来られたら――)

「この男の知識は信用しても良いですが、女遊びが酷すぎるんです。貴方も自分を女性だと思っているなら気を付けなさい」

「今のでだいぶわかりました」

未だ警戒心のある眼差しを送りながら、流麗な所作で木刀を腰に戻す。

「何もされていませんか?コイツと目を合わせていませんか?孕みますよ」

白澤から引き剥がし、自分の腕の中に迎える。

そして、ゴミでも払うかのような手つきでの肩や腕を触り、パッパッと動かす。

険しい目線は白澤に向けられたままだったので、手から伝わる柔らかな感触に眉を寄せる。

「……ん?」

「――っ」

薄布越しに触れられ、がビクッと身体を跳ねさせる。

顔を向けて、ムニュと指を沈み込ませる物体を視認するが、時既に遅し。

「………意外と」

鬼灯は眉間に皺を寄せたままつぶやく。

特徴その一、柔らかい。

特徴その二、暖かい。

特徴その三、手の中にすっぽり収まる。

「C、いやB……」

「いーーやーーっ!!」

顔をぼっと真っ赤にしたに、バシバシと木刀で叩かれた。

それでも、この両手の感触を忘れない。

痛みなんて感じない。

ただ、頭の中、心の中、いや魂全てが胸に埋め尽くされていく。

その頃、桃太郎と家来達は再会を果たしていた。

「桃太郎っ!遊びに来たよ!」

「おーー、シロッ!柿助!ルリオー!」

「元気?桃太郎」

モフモフと三匹を撫でながら、互いの近況を報告する。

「元気元気。何だお前、少しデブッたんじゃねーかー?」

「お仕事、順調?」

「順調順調。それに俺、今、薬について学んでるんだ。やっぱ今の時代、手に職かなっ……て。不況にも強き資格と専門技能…」

ぐっと拳を握り、充実した毎日を語る。

本当に、あのチンピラ時代からよく真っ当な社会人になれたな。

しかも薬剤師を目指して修業中ときた。

「大人になったね、桃太郎!」

「この漢方の権威、中国神獣の白澤様に教わってるんだ」

桃太郎の紹介を受けて、白澤は中国語で、

「どうも、よろしく」

と挨拶し、笑顔で手を振る。

「凄いんだぜ。知らない草はないんじゃないかな」

「へえー」

って、それはともかく物理的な衝撃で記憶を消去させようとするに殴られて、鬼灯はボロボロになっていく。

ちゃんは平均よりやや貧しいくらいでしょうか。

スレンダー美人なんで気にすることはないと思うんですけどね?

桃太郎達はその惨状をおろおろと見てます。

「痛い、痛いですよさん落ち着いて……あっ開く……何か開きそう……」

あまりに容赦ない攻撃に新たな世界への扉を開きかけています。

でも今忘れても、またセクハラする鬼灯を消去しないとダメだと思うんですが、どうですか?
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