第16話
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「………………」
日光が容赦なく射す部屋の中、白澤は緩慢な動作でベッドから起き上がった。
時刻は既に昼を過ぎている。
「………………」
しばらく焦点の合っていない目で虚空を見つめていると、
「………おえ」
胃からせり上がる吐き気を感じ、口許に手を当てた。
天国に建つ薬局兼仕事場、そこで家事の皿洗いをする桃太郎。
「………………………………我不喝 」
駆け込んだ便器に顔を突っ込み、吐き気の治まらない白澤が誰に謝っているのか、頭を下げていた。
「我以後布喝酒 。清原涼我 。我不喝 、我不喝 ……」
酒の飲み過ぎで二日酔いと格闘する。
気絶しそうな嘔吐と気持ち悪さに苛まれる中、声を外聞なく撒き散らす。
「毎回懲りずによく飲みますね。昨日は紹興酒 と養命酒をチャンポンしてました。養命してないよね」
悲しいことに慣れてしまった桃太郎は皿洗いを続けながら、冷静な言葉を投げかける。
「ちょっ…桃 タロー君、黄連湯 作って……」
※黄連湯……二日酔いに用いる漢方薬の一つ。
ちなみに「湯」がつくのは煎じ薬。
「この人、日頃の不摂生が原因で薬に詳しくなったんじゃ……」
トイレから動かなかった白澤が出てきて、ふらふらと床に倒れる。
「…違う……毎晩女の子と遊んでたら体力がもたなくて、元気になる薬作りまくってたら別件で色々できた」
「最低だ、この男」
この場合の元気になるというのは精力増進……欲求を満たすためのついでとして漢方に詳しくなった理由を聞いて、桃太郎は怠惰な上司を糾弾する。
「進歩ってのは欲から生まれるんだよ……」
未だ意識が二日酔いと覚醒の狭間を漂い、
「パソコンだって仕事目的よりエロ動画見たさで始めた方がはるかに上達が早いだろう?」
とぼやくが、気のない返事をした。
「…へえ~。さっき物凄い美人が帰りましたけど……アレ誰ですか?」
「ああそう………え…帰った?…ああ、番号訊くの忘れちゃった……」
冷蔵庫から氷枕を取り出し、椅子に寝そべる。
「…桃タロー君、今日は休もう……」
「あの…何なんスか、その桃タローって……」
「いいじゃない桃 。中国語で桃 ね。タローは日本ぽいから好きなの僕。シロちゃんもシローのほうがいいよ」
タロー(桃太郎)、ジロー、サブロー、シロー(シロ)と家族構成を決められた。
「俺が長男でシロが四男!?」
軽く溜め息をつき、長きに渡るライバルである鬼灯の名を出す。
「全く…これじゃあ、鬼灯さんにとやかく言われても言い返せないっスよ」
「アイツは鬼だよ?ウワバミだよ」
「じゃあ一つ負けてますね」
勝敗について鬼灯に軍配が上がると聞いて、白澤の表情が変わり、勢いよく起き上がった。
「まだイケるよ、迎え酒だ!」
「ハァ!?」
「衆合地獄まで飲みに行く!!」
「近所に天国名物『飲兵衛 が一度は夢見る滝[俗称・堕落の聖水 ]』があるじゃないっスか!」
――養老の滝。
「あそこには女の子がいない!それに言ってもアレ、大吟醸オンリーじゃん。もっと色んなのをちょこっとずつ楽しみたい」
「女子かッッ!!真の飲兵衛はひたすら清酒を何合も仰ぐわッッ」
桃太郎が顔を歪めるのと対照的に、白澤は急いで身支度を整える。
閻魔に誘われた不機嫌な鬼灯に、自分も同行するという無理な条件つきで、凜は初めて居酒屋をくぐることになった。
「未成年のあたしが入ってもいいんですか?」
アルコールの香りが鼻をつく。
明らかに未成年である自分が入店してはいけない。
「現世では法律違反だけれど、地獄じゃあ何百年も生きてる人達ばかりだから。ごめんね……凜ちゃんはまだ18歳なのに」
「閻魔様が謝ることじゃないですよ。それにしても、18歳なんて中途半端ですよね…これが19歳だったら誤魔化せそうなのに」
「凜ちゃん、もしかしてお酒に興味あるの?」
「バレなければいいんですよ。私がそんなボロを出すと思ってるんですか?」
三人は入り口に近い席に座る。
凜は客の中にお香を見つけた。
仕事終わりで、友人と飲みに来ているらしい。
唐瓜や茄子もいて、手を振ってくれた。
周りを見れば一杯目からハイペースで飲んで、閻魔に至ってはテンションが上がり始めている。
鬼灯はまだ酔っていない。
(なるほど…このくらいじゃ酔わないのか)
などと考えている内に、鬼灯が頼んでいた食前酒が目の前に置かれた。
「……ま、多分来るだろうとは思ってたけど」
もはや文句を言う気持ちも捨てて、凜は自分のグラスを眺めた。
暗い照明を受けて、発泡酒が妖しい輝きを増している。
居酒屋だと気づいた時点で、予測していた成り行きだ。
「飲めないのなら無理はしなくて結構です。この程度、私一人で片づけられますから」
澄まして鬼灯が言う。
小ばかにするような口ぶりだった。
こんなことで張り合うのもアホらしい。
頭では理解しながらも、凜はグラスを持ち上げた。
好奇心に弱い性分なのだ。
ゆっくりと口に含み、味わう。
「――甘い」
「飲みやすい飲み口を頼んでおきました」
そこからはちびちびと飲み、カクテルやスクリュードライバーにも口をつける。
鬼灯と閻魔が見守る中、彼女はその独特な飲み方で次々酒を空っぽにしていく。
――す、凄い。
飲んでから次の酒に注ぐまでの間断がない。
(ていうかここまで少ない動作で飲めるもんなのか、酒って)
鬼灯も枡 に注いだ酒を飲みながら、凜の飲みっぷりに唖然とする。
「……凜さん、飲酒は初めてなんですよね?」
「そうですよ?何か変ですか?」
「顔もそんなに赤くなってないし……」
「んー?」
普段と変わらない凜は白い頬に手を当てて首を傾げる。
彼女の飲むスクリュードライバーは、ウォッカにオレンジジュースを使った古典的なカクテルだ。
別名、レディーキラー。
アルコール度数の高いウォッカをベースにした場合でも口当たりがよいとされることから、女性を無自覚なまま酔わせるのに適したところからついた名前だ。
どうやら、酒に強い体質らしい。
店に入ってきた相手の顔を認識した瞬間、
「………………………………あ?」
ほとんど喧嘩腰で振り返り、さらに顔面まで歪ませて威嚇してきた。
「らっしゃいやせ~~。二名様でよろしいですか~~」
間延びした店員の声が届くが、
――ケンカ上級者のメンチ切り!!!
見覚えのある顔に嫌悪が交じり、吐血する白澤と目を剥く桃太郎は後悔した。
「…あ、胃潰瘍になったっぽい」
(…相手を認識して0.1秒くらいで威嚇してきた……)
心身に多大なダメージを与えた鬼灯の横、凜は威嚇する声に狼狽した。
――めっさ不機嫌になった!
――なんだ今の声。
(でも誰が来たかなんとなくわかった)
「柄悪いなぁ鬼灯君……官吏が升片手に『あ?』なんて言うもんじゃないよ」
微かな怯えを込めて閻魔がたしなめ、
「手慣れた威嚇だな、また…」
と威嚇に秘められた圧力で、顔を青ざめさせる。
「失礼しました」
「ごめんね、無理に誘ったから機嫌が悪いんだ。ここ座んなよ」
ぐぱぐぱと勢いよくアルコールを体内に取り込む鬼灯の向かい側を、
「どうぞどうぞ」
と閻魔は促す。
(…下町の裏通りにこういう人よくいるよな……)
桃太郎が不機嫌な鬼灯の様子を喩えていると、白澤の周囲から影が覆う。
「…何でいるんだ……今日はもう最悪の日だ……ツイてない日だ……」
「アンタ、吉兆の印だろ」
鬼灯の後ろから顔を出し、彼がメンチを切った相手を確認した。
「こんばんは」
「あっ、凜ちゃんだっ!今日はもうついてないかと思ったよ!」
すると、凜のグラスにドバドバ焼酎が注がれた。
「えっ、ちょっと!」
「上司に注いでもらったものを飲まないのはマナー違反です」
「横暴だ!」
焼酎水割りにしてぐいっと飲み干せば、今度は鬼灯の升に酌をする。
勿論、閻魔にも注ぐのも忘れない。
焼酎を水のように飲み干した凜に、白澤は目を丸くした。
「いい飲みっぷりだね。もしかしてお酒強いの?」
「お酒を飲んだのも、お酒に強い体質なのも今日が初めてです」
「「え!?」」
これには、白澤と桃太郎の二人が揃って愕然とした。
料理の皿が運ばれてくるようになった。
メインは鍋で、つまみ系の小皿や寿司など盛りだくさんだった。
どれも本当にいい味で、これだけでも居酒屋にやって来た甲斐がある。
そう思えた。
≪凜ちゃーん、こっちに来て歌いましょう!≫
カラオケを始めるお香に捕まって、凜は歌声を披露させられる。
その頃、目の前でぐつぐつと煮えている真っ赤な鍋に、すっかりできあがった白澤は声をあげた。
「おっ麻辣火鍋 だ。辛いよ~~これは」
「胃ィ荒れてんのにそんな飲んで、さらに辛いもの……」
「僕、辛いの大好き」
桃太郎は椀に具材をよそって白澤の前に置く。
「桃太郎君はすっかりできる主婦のようだね」
「ダメな上司がいると、部下が恐ろしく成長したりしますよね」
身の回りの世話が上手。
それはもう部下より主夫扱いではないか。
「……そういえば、凜さんはどこに?」
「あぁ、凜ちゃんならあそこだよ」
日光が容赦なく射す部屋の中、白澤は緩慢な動作でベッドから起き上がった。
時刻は既に昼を過ぎている。
「………………」
しばらく焦点の合っていない目で虚空を見つめていると、
「………おえ」
胃からせり上がる吐き気を感じ、口許に手を当てた。
天国に建つ薬局兼仕事場、そこで家事の皿洗いをする桃太郎。
「………………………………
駆け込んだ便器に顔を突っ込み、吐き気の治まらない白澤が誰に謝っているのか、頭を下げていた。
「
酒の飲み過ぎで二日酔いと格闘する。
気絶しそうな嘔吐と気持ち悪さに苛まれる中、声を外聞なく撒き散らす。
「毎回懲りずによく飲みますね。昨日は
悲しいことに慣れてしまった桃太郎は皿洗いを続けながら、冷静な言葉を投げかける。
「ちょっ…
※黄連湯……二日酔いに用いる漢方薬の一つ。
ちなみに「湯」がつくのは煎じ薬。
「この人、日頃の不摂生が原因で薬に詳しくなったんじゃ……」
トイレから動かなかった白澤が出てきて、ふらふらと床に倒れる。
「…違う……毎晩女の子と遊んでたら体力がもたなくて、元気になる薬作りまくってたら別件で色々できた」
「最低だ、この男」
この場合の元気になるというのは精力増進……欲求を満たすためのついでとして漢方に詳しくなった理由を聞いて、桃太郎は怠惰な上司を糾弾する。
「進歩ってのは欲から生まれるんだよ……」
未だ意識が二日酔いと覚醒の狭間を漂い、
「パソコンだって仕事目的よりエロ動画見たさで始めた方がはるかに上達が早いだろう?」
とぼやくが、気のない返事をした。
「…へえ~。さっき物凄い美人が帰りましたけど……アレ誰ですか?」
「ああそう………え…帰った?…ああ、番号訊くの忘れちゃった……」
冷蔵庫から氷枕を取り出し、椅子に寝そべる。
「…桃タロー君、今日は休もう……」
「あの…何なんスか、その桃タローって……」
「いいじゃない
タロー(桃太郎)、ジロー、サブロー、シロー(シロ)と家族構成を決められた。
「俺が長男でシロが四男!?」
軽く溜め息をつき、長きに渡るライバルである鬼灯の名を出す。
「全く…これじゃあ、鬼灯さんにとやかく言われても言い返せないっスよ」
「アイツは鬼だよ?ウワバミだよ」
「じゃあ一つ負けてますね」
勝敗について鬼灯に軍配が上がると聞いて、白澤の表情が変わり、勢いよく起き上がった。
「まだイケるよ、迎え酒だ!」
「ハァ!?」
「衆合地獄まで飲みに行く!!」
「近所に天国名物『
――養老の滝。
「あそこには女の子がいない!それに言ってもアレ、大吟醸オンリーじゃん。もっと色んなのをちょこっとずつ楽しみたい」
「女子かッッ!!真の飲兵衛はひたすら清酒を何合も仰ぐわッッ」
桃太郎が顔を歪めるのと対照的に、白澤は急いで身支度を整える。
閻魔に誘われた不機嫌な鬼灯に、自分も同行するという無理な条件つきで、凜は初めて居酒屋をくぐることになった。
「未成年のあたしが入ってもいいんですか?」
アルコールの香りが鼻をつく。
明らかに未成年である自分が入店してはいけない。
「現世では法律違反だけれど、地獄じゃあ何百年も生きてる人達ばかりだから。ごめんね……凜ちゃんはまだ18歳なのに」
「閻魔様が謝ることじゃないですよ。それにしても、18歳なんて中途半端ですよね…これが19歳だったら誤魔化せそうなのに」
「凜ちゃん、もしかしてお酒に興味あるの?」
「バレなければいいんですよ。私がそんなボロを出すと思ってるんですか?」
三人は入り口に近い席に座る。
凜は客の中にお香を見つけた。
仕事終わりで、友人と飲みに来ているらしい。
唐瓜や茄子もいて、手を振ってくれた。
周りを見れば一杯目からハイペースで飲んで、閻魔に至ってはテンションが上がり始めている。
鬼灯はまだ酔っていない。
(なるほど…このくらいじゃ酔わないのか)
などと考えている内に、鬼灯が頼んでいた食前酒が目の前に置かれた。
「……ま、多分来るだろうとは思ってたけど」
もはや文句を言う気持ちも捨てて、凜は自分のグラスを眺めた。
暗い照明を受けて、発泡酒が妖しい輝きを増している。
居酒屋だと気づいた時点で、予測していた成り行きだ。
「飲めないのなら無理はしなくて結構です。この程度、私一人で片づけられますから」
澄まして鬼灯が言う。
小ばかにするような口ぶりだった。
こんなことで張り合うのもアホらしい。
頭では理解しながらも、凜はグラスを持ち上げた。
好奇心に弱い性分なのだ。
ゆっくりと口に含み、味わう。
「――甘い」
「飲みやすい飲み口を頼んでおきました」
そこからはちびちびと飲み、カクテルやスクリュードライバーにも口をつける。
鬼灯と閻魔が見守る中、彼女はその独特な飲み方で次々酒を空っぽにしていく。
――す、凄い。
飲んでから次の酒に注ぐまでの間断がない。
(ていうかここまで少ない動作で飲めるもんなのか、酒って)
鬼灯も
「……凜さん、飲酒は初めてなんですよね?」
「そうですよ?何か変ですか?」
「顔もそんなに赤くなってないし……」
「んー?」
普段と変わらない凜は白い頬に手を当てて首を傾げる。
彼女の飲むスクリュードライバーは、ウォッカにオレンジジュースを使った古典的なカクテルだ。
別名、レディーキラー。
アルコール度数の高いウォッカをベースにした場合でも口当たりがよいとされることから、女性を無自覚なまま酔わせるのに適したところからついた名前だ。
どうやら、酒に強い体質らしい。
店に入ってきた相手の顔を認識した瞬間、
「………………………………あ?」
ほとんど喧嘩腰で振り返り、さらに顔面まで歪ませて威嚇してきた。
「らっしゃいやせ~~。二名様でよろしいですか~~」
間延びした店員の声が届くが、
――ケンカ上級者のメンチ切り!!!
見覚えのある顔に嫌悪が交じり、吐血する白澤と目を剥く桃太郎は後悔した。
「…あ、胃潰瘍になったっぽい」
(…相手を認識して0.1秒くらいで威嚇してきた……)
心身に多大なダメージを与えた鬼灯の横、凜は威嚇する声に狼狽した。
――めっさ不機嫌になった!
――なんだ今の声。
(でも誰が来たかなんとなくわかった)
「柄悪いなぁ鬼灯君……官吏が升片手に『あ?』なんて言うもんじゃないよ」
微かな怯えを込めて閻魔がたしなめ、
「手慣れた威嚇だな、また…」
と威嚇に秘められた圧力で、顔を青ざめさせる。
「失礼しました」
「ごめんね、無理に誘ったから機嫌が悪いんだ。ここ座んなよ」
ぐぱぐぱと勢いよくアルコールを体内に取り込む鬼灯の向かい側を、
「どうぞどうぞ」
と閻魔は促す。
(…下町の裏通りにこういう人よくいるよな……)
桃太郎が不機嫌な鬼灯の様子を喩えていると、白澤の周囲から影が覆う。
「…何でいるんだ……今日はもう最悪の日だ……ツイてない日だ……」
「アンタ、吉兆の印だろ」
鬼灯の後ろから顔を出し、彼がメンチを切った相手を確認した。
「こんばんは」
「あっ、凜ちゃんだっ!今日はもうついてないかと思ったよ!」
すると、凜のグラスにドバドバ焼酎が注がれた。
「えっ、ちょっと!」
「上司に注いでもらったものを飲まないのはマナー違反です」
「横暴だ!」
焼酎水割りにしてぐいっと飲み干せば、今度は鬼灯の升に酌をする。
勿論、閻魔にも注ぐのも忘れない。
焼酎を水のように飲み干した凜に、白澤は目を丸くした。
「いい飲みっぷりだね。もしかしてお酒強いの?」
「お酒を飲んだのも、お酒に強い体質なのも今日が初めてです」
「「え!?」」
これには、白澤と桃太郎の二人が揃って愕然とした。
料理の皿が運ばれてくるようになった。
メインは鍋で、つまみ系の小皿や寿司など盛りだくさんだった。
どれも本当にいい味で、これだけでも居酒屋にやって来た甲斐がある。
そう思えた。
≪凜ちゃーん、こっちに来て歌いましょう!≫
カラオケを始めるお香に捕まって、凜は歌声を披露させられる。
その頃、目の前でぐつぐつと煮えている真っ赤な鍋に、すっかりできあがった白澤は声をあげた。
「おっ
「胃ィ荒れてんのにそんな飲んで、さらに辛いもの……」
「僕、辛いの大好き」
桃太郎は椀に具材をよそって白澤の前に置く。
「桃太郎君はすっかりできる主婦のようだね」
「ダメな上司がいると、部下が恐ろしく成長したりしますよね」
身の回りの世話が上手。
それはもう部下より主夫扱いではないか。
「……そういえば、凜さんはどこに?」
「あぁ、凜ちゃんならあそこだよ」