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幻寂SS

日差しが、さらさらと降り注ぐような初夏の日。ちょっと驚かせてやろうと思い、隣を歩く彼の手を握った。その手は見た目より華奢で、想像より頼りなくて、人はこんなものに必死に縋るのかと驚いた。手はびくりと震え、そしておずおずと握り返す。汗ばむ季節に不釣り合いな冷えた指先が小生の手を這い、その感触にぐらりと揺らぐ。街の騒めきも、行き交う人々も随分と遠くに感じた。どんな顔をしていいかわからず、彼の手から腕へ、肩へ、首へと視線を移した。彼と同じ顔をしてやろうと覗き込んでみたものの、逆光に阻まれる。かろうじて、長い髪の隙間から除く耳朶がやけに鮮やかな色彩であることだけを理解する。
「驚きました?」
見えてはいないがきっと同じ顔をしている彼には、小生の嘘がばれているでしょう。
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