左理
この時期の重く湿った空気は、ゆっくりと首を絞められるようで心地よい。このまま、眠りにつくのも悪くない。永遠の眠りについて、ゆっくりと闇の中を彷徨うだけ。いや、わからないな、死後の世界など。明るいかもしれないし、暗いかもしれない。騒がしいかもしれないし、静かかもしれない。遠いかもしれないし、近いかもしない。…彼が、いるかもしれないし、いないかもしれない。
「おい、理鶯!ぼさっとしてんじゃねぇよ」
彼の声に現実世界に引き戻される。その白銀の髪に、未来を見つける。
「すまない、そうだな。そろそろ行くか」
過去の幻影に頭を下げて、視線を持ち上げた。
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