幻寂SS
太陽の光は明るく、まぶたを突き抜けて視界を真っ赤に染め上げる。 ゆっくりと目を開け、ふと隣を見ると温かいシーツにくるまってた可愛い恋人の姿が見える。…いや、可愛いは言い過ぎたか。上背が195cmにも及ぶ齢35歳男性の恋人は、可愛いと言うには無理がある。可愛さ、で言ったら小生の方がいくらか可愛くありましょう。何も可愛いと言うのは小さく、弱々しく、愛らしいものだけを指す言葉ではない。それにしても、いくらなんでも。
長い髪がシーツに散らばる様は壮観だ。そっと指で一束摘み、持ち上げるとゆったりとたわむ。そんなことには少しも気付かず、すうすうと寝息を立てる。呼吸に合わせ細すぎる体幹が上下する。
それだけだ。つまり、可愛いなんて表現とは程遠いはずなのに。
「これが可愛く見えるのが、恋なんですかね」
半ば無意識に口から溢れた音色は、自分が思うより幸せそうに聞こえた。
長い髪がシーツに散らばる様は壮観だ。そっと指で一束摘み、持ち上げるとゆったりとたわむ。そんなことには少しも気付かず、すうすうと寝息を立てる。呼吸に合わせ細すぎる体幹が上下する。
それだけだ。つまり、可愛いなんて表現とは程遠いはずなのに。
「これが可愛く見えるのが、恋なんですかね」
半ば無意識に口から溢れた音色は、自分が思うより幸せそうに聞こえた。
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