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幻寂SS

小生の中に、もう一人の人間がいるような感覚。これは大変不思議な感覚です。
普段小生の外側には信じがたいほど数多の人間がいますが、それらはすべて小生が吐き出した嘘ですから、彼らが小生に歯向かったり悪さすることは少しも、えぇ、これっぽっちもないのです。
しかしながらどこからともなく現れたもう一人の私は小生をどこまでも苦しめるのです。
悪さ、なんて可愛らしいものではありません。力の限りに訴えかけてくるのです。
テリトリーバトルで見たあの、昂揚で赤く染まった目元が忘れられないと。指先からこぼれる見えない赦しに縋りたいと。
彼を、しっかりと掴まねばならないと。
馬鹿馬鹿しい。掴むどころか、触れることも叶わぬ相手にどうしろと言うのか。
貴方はいったい、どこから来たのですか。
その問いかけに答えられる人間はいないのです。
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