このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

幻寂SS

どうして君はいつもそう、すがる様な目で私を見るんだろう。
何かをねだる様な、祈る様な、怯えた様な翠色の揺らぎは心臓を揺さぶる事をわかってやっているんじゃないかと、時々思うよ。
柔らかな色素の薄い髪は丁寧に扱われていて、私はそんなものにまで嫉妬を覚える様な男なんだよ。
おかしいだろう、滑稽だろう。
こんないい歳した大人が、いつも澄まして動揺することなどありませんと言わんばかりに落ち着きはらったふりをしているのに、一回りも年下の、それも同性への片想いに振り回されているなんて。
自分にまさか、こんな情熱が残っているとは思わなかったんだよ、本当にね。
「先生」
毎日毎日、沢山の人にそう呼ばれているはずなのに、君の声だというだけで何だかくすぐったい。
「愛の歌を、聴かせてくださいな。小生はあまり知らないのです」
一体全体、どんなつもりでそんな事を言うんだろう。私の中には、吐き出せない愛の歌がくすぶっていると言うのに。そんな事、御構いなしだね。
「いいよ、とっておきの音源をお貸ししよう」
気に入ってくれると、いいのだけど。
14/23ページ
スキ