【七鬼夜行】
 長い木綿のマフラーを巻いて、草履を履いて、煙管で煙をくゆらせて、唐傘を差し、提灯を片手に、懐に鏡を入れて歩く彼女は化け狸。
 黄昏時のあぜ道を一人で歩きながら、彼女は僕に笑いかける。
「一人ではないんだよ」
 僕はその言葉の意味が分からない。
 では、何人なのだろう?

【雲隠れのお月】
 壊れたソファに腰掛けて狸が酒を飲んでいる。今夜は月が出ないから腹鼓大会はお休みだ。
 隣に座る人間の見た目をした化け狸が呟いた。
「腹鼓大会の優勝賞品って何だったんです?」
 フカフカした動物の方の狸が返す。
「タラノメをカゴいっぱい」
「そりゃ素敵だ。今回は残念でしたね」
 酒だけが進む。
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