【名湯、うらみの湯】
 井戸に落とされて死んだ者の成れの果て。「狂骨」が井戸の縁に腕をかけて頭にタオルを乗せている。
「何やってるんですか」
「人間を祟るのに飽きてなぁ。温泉ごっこの最中さ」
「本当に何やってるんですか」
 水に浸かって歌う狂骨の為に、井戸にお湯を放り込んだ。
「やあ、ありがとな」
 骨が笑う。

【この悪戯者め】
 茶室へどうぞとオスの狸に手招かれ、丁重にお断りした。茶室と狸といえば、その、あれを広げたものだろう。
「でも雨が降っていますよ。雨宿りには最適ですよ」
 オス狸はへらへら笑う。
 仕方がない、ええいままよと飛び込んで、そうして察した。
 雨なんて降っていなかった。
 そっちで化かされたのだ。
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