AIとレモンティー

 走るヒロヤとアルキメデスは、スクラップ処理場に向かって一直線である。
 カナメがいるコンテナが、押し潰す機械のちょうど中央に置かれ、横からゆっくりプレス機が進んでくるのに、ヒロヤが立ち止まった。
「おい、何してんだよ! カナメが危ねえんだぞ!」
「カナメ様が助かる確率は、三パーセントにまで落ちました」
「さ、三パーセントだと!?」
「このまま俺たちが助けに行っても、俺たちが故障してしまう確率、九九パーセント」
 だからといってここでただ見ていろというのか。
 身動き一つとらず、完全に諦めた様子のヒロヤがアルキメデスを止めようと手を掴んで離さない。
「うるせえ」
 銀色のモノアイは憤った。
「うるせえ! 俺たちがぶっ壊れさえすりゃあ、助かる確率が上がるかもしれねえじゃねえか!」
 思い切り腕を振りぬき、ヒロヤを弾き飛ばす。
 アルキメデスは走り出した。
 自分の、主人のもとへ。
 違う。
 自分が愛する、バカな少女のもとへ。
「カナメエエエッ!!」
 くず鉄が磁力をまとい空中を舞っている。
 釘が飛んできて、アルキメデスの足を貫いた。
 火花を散らした配線が背を叩く。
「ぐう!」
 唸るアルキメデスは止まらない。
「アルキメデス……来ちゃ駄目! あんたまで壊れちゃう!」
「うるせえ! うるせえうるせえ! 俺は、誰の言うことも聞かねえ!」
 コンテナまで、あと少し。
 上から落ちてきた鉄柱がアルキメデスの右腕を奪った!
 プレス機はどんどんと狭まっていく。
 しかし。
 アルキメデスは走る。
「カナメェーッ!」
「アルキメデス!!」
 コンテナから引っ張り出し、横にとび、プレス機の間をすり抜けて転がり出たカナメとアルキメデスは、きつく抱きしめあっていた。
 涙をぼろぼろこぼし、しゃくりあげる少女の頭を左腕で抱え、素行が悪い執事ロボが舌打ちを一つこぼす。
「どうでぇ」
 吐き捨てるような言葉だったが、そこにあったのは怒りではなかった。
「いう事聞かねえってのも、悪かねえだろ?」
 カナメを守れた誇らしさ。それだけだ。
 カナメは笑った。嬉しそうに笑った。うっとりもしないし、夢見心地でもない、目の前の現実と力強く守ってくれた執事ロボに。
 輝く笑顔を向けていた。
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