AIとレモンティー
カナメの様子を見かねたらしい両親の計らいだった。
なんと、栄愛家に最新型の執事ロボがやってきたのだ。
金髪碧眼、高身長で人間の姿をしている、まごう事なきイケメンである。
「初めまして、カナメ様……製造番号SAISHIN100型、ヒロヤと申します」
さいしん百がた、という響きは微妙にださいが、それ以外はパーフェクトだろう。ヒロヤは早速両親に命じられるままに家の掃除を始めていた。その姿の美しいこと。ホコリ一つ取るだけで絵画のように様になる美青年が、カナメの心を掴んで離さない。
「……結婚するなら、これっくらいイケメンじゃないとね」
うっとりとヒロヤの様子を見ているカナメに父も母も笑っていた。
「素行が悪いアルキメデスはお払い箱にしましょうよ、カナメ」
「そうだな、新しくヒロヤが我が家の執事だ」
「光栄です、皆様」
柔らかい、王子のような微笑でカナメたちを見るヒロヤが、恭しく頭を下げた。あまりに美麗なものを見すぎると人は言葉を失うらしい。ほう、と息をつくばかりだったカナメが、口を開く。
「そうね……ヒロヤがいれば、他に何もいらないかも……イケメンだし」
「おいおいおいおい! 本気で言ってやがんのか! 俺は認めねえ! 認めねえぞそんな真似! 誰がこのチンチクリンの世話しなきゃならねえと思ってるんだ! 俺以外に務まるかっての!」
「うるさいわね! ヒロヤがやってくれるわよ! このポンコツ!」
途端に始まる大喧嘩に、カナメの母が頭を抱えた。この二人はいつもこんな調子だ。いつでもどこでも構わず口喧嘩をする。お陰で家の中がにぎやかな事この上ない。
「ポンコツだと、てめえ!」
カナメににじり寄るアルキメデスが、不愉快そうにモノアイを歪めて大声を放ったときだった。
アルキメデスが、突き飛ばされたのは。
「ご無事ですか、カナメ様?」
柔らかい微笑みがカナメの視界を埋め尽くす。金髪碧眼の王子のような執事ロボがカナメを優しく見ている。がっしゃん、と何かが倒れる音がしたが、カナメには聞こえていなかった。
「……だい、じょうぶよ……ヒロヤ」
「カナメ様の心拍数上昇率、四〇パーセントです……どうしましたか?」
カナメの心を優しく包むような微笑だ。頬を赤らめたカナメが上目遣いでヒロヤを見ると、ヒロヤはにこりとした。イケメンが自分のためだけに笑っている。その事実でカナメは天にも上りそうだ。
「髪型をセットして欲しいんだけど」
「はい、カナメ様」
「お、お姫様抱っこをして欲しいんだけど」
「はい、カナメ様。危険のない場所でいたしましょう」
「私を見て、ヒロヤ」
「はい、カナメ様」
「んん~! 最高! やっぱりイケメン執事っていいわぁ!」
自分の部屋でヒロヤと戯れ、幸せオーラを出し尽くしているカナメ。そんな彼女を見て明らかにぶすくれている者が一人いる。アルキメデスだ。
全身銀色なモノアイの彼が、ほうきを手に二人のやり取りを眺めては、けっと吐き捨てるように小ばかにしていた。
「何よ、アルキメデス、その態度! お茶でも入れてきなさいよ!」
「うるせえ掃除中だ、自分で入れろぃ!」
「かしこまりました、カナメ様」
ただのお茶の要求でこの差だ。柔らかい微笑みを保ったまま、ヒロヤが部屋を後にする。紅茶を入れにいったのだろう。
カナメは勝ち誇ったようにアルキメデスを見て馬鹿にした。
「いう事を聞かないポンコツのアルキメデスより百倍役に立つわ、ヒロヤって!」
「うるせえ! 俺は誰の言うことも聞かねえ! 俺のやりたいようにやるだけでぇ!」
「はぁ!? 少しは反省したらどうなのよ! 執事失格よ!」
「んだと、てめえ! そういうお前は主人らしい教養もねえじゃねえか!」
「もう頭きた! あんたなんか週一でガッシャンガッシャン動いて煩いスクラップ処理場で潰されちゃえばいいんだわ!」
「へっ! お断りだね!」
下らない大喧嘩が始まったものだ。お互いが譲らず、相手の欠点を指摘しては、されたほうが悔しがり更に煽るものだから、なかなか喧嘩は収まらない。
トレイに紅茶を置いて戻ってきたヒロヤは、そんな二人の子供じみた争いに暖かな笑みを浮かべ、終わるまでの数十分間、紅茶が冷めないようにして待っていてくれた。
なんと、栄愛家に最新型の執事ロボがやってきたのだ。
金髪碧眼、高身長で人間の姿をしている、まごう事なきイケメンである。
「初めまして、カナメ様……製造番号SAISHIN100型、ヒロヤと申します」
さいしん百がた、という響きは微妙にださいが、それ以外はパーフェクトだろう。ヒロヤは早速両親に命じられるままに家の掃除を始めていた。その姿の美しいこと。ホコリ一つ取るだけで絵画のように様になる美青年が、カナメの心を掴んで離さない。
「……結婚するなら、これっくらいイケメンじゃないとね」
うっとりとヒロヤの様子を見ているカナメに父も母も笑っていた。
「素行が悪いアルキメデスはお払い箱にしましょうよ、カナメ」
「そうだな、新しくヒロヤが我が家の執事だ」
「光栄です、皆様」
柔らかい、王子のような微笑でカナメたちを見るヒロヤが、恭しく頭を下げた。あまりに美麗なものを見すぎると人は言葉を失うらしい。ほう、と息をつくばかりだったカナメが、口を開く。
「そうね……ヒロヤがいれば、他に何もいらないかも……イケメンだし」
「おいおいおいおい! 本気で言ってやがんのか! 俺は認めねえ! 認めねえぞそんな真似! 誰がこのチンチクリンの世話しなきゃならねえと思ってるんだ! 俺以外に務まるかっての!」
「うるさいわね! ヒロヤがやってくれるわよ! このポンコツ!」
途端に始まる大喧嘩に、カナメの母が頭を抱えた。この二人はいつもこんな調子だ。いつでもどこでも構わず口喧嘩をする。お陰で家の中がにぎやかな事この上ない。
「ポンコツだと、てめえ!」
カナメににじり寄るアルキメデスが、不愉快そうにモノアイを歪めて大声を放ったときだった。
アルキメデスが、突き飛ばされたのは。
「ご無事ですか、カナメ様?」
柔らかい微笑みがカナメの視界を埋め尽くす。金髪碧眼の王子のような執事ロボがカナメを優しく見ている。がっしゃん、と何かが倒れる音がしたが、カナメには聞こえていなかった。
「……だい、じょうぶよ……ヒロヤ」
「カナメ様の心拍数上昇率、四〇パーセントです……どうしましたか?」
カナメの心を優しく包むような微笑だ。頬を赤らめたカナメが上目遣いでヒロヤを見ると、ヒロヤはにこりとした。イケメンが自分のためだけに笑っている。その事実でカナメは天にも上りそうだ。
「髪型をセットして欲しいんだけど」
「はい、カナメ様」
「お、お姫様抱っこをして欲しいんだけど」
「はい、カナメ様。危険のない場所でいたしましょう」
「私を見て、ヒロヤ」
「はい、カナメ様」
「んん~! 最高! やっぱりイケメン執事っていいわぁ!」
自分の部屋でヒロヤと戯れ、幸せオーラを出し尽くしているカナメ。そんな彼女を見て明らかにぶすくれている者が一人いる。アルキメデスだ。
全身銀色なモノアイの彼が、ほうきを手に二人のやり取りを眺めては、けっと吐き捨てるように小ばかにしていた。
「何よ、アルキメデス、その態度! お茶でも入れてきなさいよ!」
「うるせえ掃除中だ、自分で入れろぃ!」
「かしこまりました、カナメ様」
ただのお茶の要求でこの差だ。柔らかい微笑みを保ったまま、ヒロヤが部屋を後にする。紅茶を入れにいったのだろう。
カナメは勝ち誇ったようにアルキメデスを見て馬鹿にした。
「いう事を聞かないポンコツのアルキメデスより百倍役に立つわ、ヒロヤって!」
「うるせえ! 俺は誰の言うことも聞かねえ! 俺のやりたいようにやるだけでぇ!」
「はぁ!? 少しは反省したらどうなのよ! 執事失格よ!」
「んだと、てめえ! そういうお前は主人らしい教養もねえじゃねえか!」
「もう頭きた! あんたなんか週一でガッシャンガッシャン動いて煩いスクラップ処理場で潰されちゃえばいいんだわ!」
「へっ! お断りだね!」
下らない大喧嘩が始まったものだ。お互いが譲らず、相手の欠点を指摘しては、されたほうが悔しがり更に煽るものだから、なかなか喧嘩は収まらない。
トレイに紅茶を置いて戻ってきたヒロヤは、そんな二人の子供じみた争いに暖かな笑みを浮かべ、終わるまでの数十分間、紅茶が冷めないようにして待っていてくれた。