『大きくなったら番になって』
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「フロイド君、そろそろ起きないと今日もお仕事でしょ?」
「ん~……もう少し……」
起きてベッドから抜け出ようとしていた私を後ろから抱き寄せ、腹部に長い腕を巻き付けながら、背中に額をグリグリと擦り付け、イヤイヤと駄々を捏ねた。そんな彼を可愛く思いながらも、このままだとまたアズール君に怒られてしまうだろうと安易に予想出来てしまった為、ほら、一緒に起きるよ! と彼を促した。
「え~……クマノミちゃんとゆっくりするから今日は休む」
「ダメだよ? 今日も一般公開の日でしょう?」
「クマノミちゃんはオレと一緒に居たくないの?」
「そうじゃないけど、私はフロイド君が頑張ってるところが見たいなぁ?」
「オレが頑張ってるところが見たいの?」
うんと彼に頷いて見せると、何で? と訝し気にこちらを見て来た。そんな彼の髪を手櫛で整えながら、昨日の彼の働いている時の姿を思い出しながら口を開く。
「あのカッコイイ寮服で給仕をしてるフロイド君の姿も好きだし、ホールを泳ぐみたいに優雅に移動する姿もカッコ良かったからまた見たいんだけど、ダメ?」
「っ……! クマノミちゃんズリィ……」
「ふふふ……ほら、用意してラウンジ行こ?」
彼をシャワールームに押し込んで、ドライヤーを準備して彼が出て来るのを待っていると、腰にタオルを巻いたままガシガシと頭を拭きながら出て来た。ゔっ……ちゃんと男の人の体してて直視できない。抱き締められた時にもしっかりした体してるなとは思ってたけど、ここまでとは思ってなかった私は、両手で顔を覆うと早く服を着るように促した。
「なぁに? クマノミちゃん。オレの裸見て恥ずかしくなっちゃった?」
「いっ……良いから早く服を着なさい!!」
「触ってみても良いんだよ? ほら」
「ちょっと、こっち来なくていいから! きゃっ!」
「フロイド、起きてます? ……おやおや、お邪魔でしたか?」
フロイド君に手首を掴まれ、彼の剥き出しの胸元に手を触れさせられた私は、驚いて彼の胸元を押した。その反動でベッドに倒れ込んだ私を、反射的に助けようとしたフロイド君に押し倒されるような形になってしまった。彼の端正な顔と見つめ合って、この状況はどうしたら良いんだろうと思っていると、そこにタイミング良くというか悪くというか、ジェイド君が部屋に入って来て彼は心底楽しそうに笑っていた。
「昨夜だけでは足りなかったんですか? フロイド」
「はぁ?! シてねぇし! ていうか、クマノミちゃん今大変だから出来ねぇの!」
「大変?」
「あ、えっと……月の物が……」
「なるほど。体調は大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
生理中というのはフロイド君との行為を避けるための嘘とはいえ、心配してくれている彼らを騙しているのは少なからず胸が痛んだ。そんな事とは知らないフロイド君は、寮服へと着替えながら頻りにお腹は痛くないか、貧血にはなってないかなど心配そうに私に問い掛けて来るので、大丈夫だと苦笑して返すしか出来なかった。
「じゃあ、帰るね?」
「クマノミちゃん……本当に帰っちゃうの?」
「フロイド。ポピーさんは体調不良なんですよ? 自宅でゆっくりさせてあげるべきでしょう?」
「アズール……」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ? 休憩時間かお仕事終わったら連絡して? 待ってるから」
「クマノミちゃん」
「なぁに?」
彼に呼ばれてそちらを見上げると、彼の大きな両手が私の頬を包み込む。困惑して見上げるしか出来ない私に、彼の整った顔が近付いた。え? と思ったのも束の間、彼の艶のある少し冷たい唇が私のそれと重なった。オープン前の出来事だった為、数多の寮生にその場面を見られてしまい、室内がざわついた。その様子を見たアズール君は呆れたように蟀谷を押さえているし、ジェイド君は楽しそうに笑っているだけだった。
「クマノミちゃん、気を付けて帰ってね?」
「うん……」
彼らに見送られながらラウンジを後にし、昨日別れたままの彼女に連絡を入れると、昨日の報告をしろとの指令が下ったので、それに分かったと返すと家で待ってるとの事だった。とりあえず彼女と食べるようにと麓の街で美味しそうなタルトを数種類購入し、歩いて彼女の家に向かった。朝早く学園を出たけれど、彼女の住むマンションに着く頃には午後になっていた。丁度下りて来たエレベーターを使って彼女の住んでいる階を押すと、ゆっくりとそれは動き出した。チンと目的階に着いた事を知らせる音が鳴り、降りると玄関先で同期が立っていた。
「あ、来た来た! ポピー」
「ごめんね! お待たせ!」
「全然! それより早く昨日のイケメン君との事聞かせてよ!」
「あ、もう!」
早く早くと急かして私の背中を押す彼女に苦笑しながら、彼女の住む部屋へと足を踏み入れた。綺麗に整えられた部屋はふわりと優しい香りがして、いつも思うけれどすごく落ち着く。そんな私をソファーに座らせた彼女に、さっき麓の街で買って来たタルトが入った箱を渡すと、直ぐにお茶用意するね! と私に背中を向けるとカップなどを用意し始めた。カチャカチャと音を立てながら用意をしている彼女から、昨日の彼の事教えてよとの言葉が来た。どれだけ彼の事が気になってるんだと思いつつ、彼女が出してくれた紅茶のカップに口を付ける。
「昨日の彼はこの前店に買い物に来たフロイド君。ナイトレイブンカレッジの二年生で人魚さんだよ」
「待って待って! 人魚?!」
「うん、そうだよ? この間フロイド君と一緒にいた子がジェイド君で双子の兄弟」
「イケメン兄弟……っていうかお泊りしたんでしょ?!」
「ゔっ……した」
彼女が聞きたかったのはきっと進展したのかどうかだろうと思っていたけれど、やっぱりそうだったようで、で?! どうなの?! と詰め寄られた。正直に押し倒されて行為手前までいったと言うべきか、隠しておくべきか悩んでいると一線超えたの?! と詰め寄られた。
「してない……生理だって嘘吐いて回避した」
「何で?! 好きなんでしょ?!」
「好きだけど……フロイド君は高校生だし、まだ陸二年生の人魚さんだしさ? 陸の女の人に興味があるだけかもしれないし……」
「いやいや、店で会った感じでも連絡した感じでも昨日の感じからも絶対アンタの事好きじゃん! 興味があるとかの程度ではなかったよ? アレは」
今度のデートではちゃんとそういう雰囲気になったら受け入れる準備もしときなよ? と彼女に言われ、検討しますとだけ答えて残りのタルトに手を伸ばした。その後もあんなハイスペック男子中々いないんだから絶対逃したらダメなんだからね! と懇々と言い聞かせるように話す彼女に、私の事は良いから自分はどうなのよと返すと別れましたー!! と返って来た。
「そういえば、嫁がいたとか言ってたっけ?」
「そうなのよ! アイツ未婚だって言ってた癖に結婚してたのよ?! 嫁にチクってやったわ!」
「え?! 慰謝料とか請求されなかったの?」
「私は払うって言ったんだけど、奥さんがアイツと別れるために協力してくれるなら私からは取らないって言ってくれてね? 全面協力して見事に最近離婚したみたい」
奥さんとっても素敵な人だったからあんな奴と別れられて良かったと思うよ? と、すっかり奥さんの味方の同期に苦笑していると、夜ご飯食べて行くでしょ? と聞かれたのでそれにこくりと頷いた。その後は二人共お酒が入り、彼女の今までの男性遍歴を聞く事になり、気付いたらお泊りコースになっていたのだった。
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