『大きくなったら番になって』
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「うわぁ……すごい綺麗……」
「気に入った?」
「こんな素敵な部屋使って良いの? それに宿泊費も高いんじゃ……」
「そんな事どうでもいい! ねぇ? クマノミちゃん」
バフッとベッドに仰向けに倒れ込み、その長い肢体を横たえたフロイド君が私の方へと腕を広げて自分の所へと来るように呼んだ。そんな彼にゆっくりと歩み寄り、どうしたの? と彼に問い掛けるとグッと腕を引かれて彼の上に勢いよく倒れ込んだ。ドサッと勢いよく倒れ込んだ為、自分の下にいるフロイド君に大丈夫? と彼を見下ろすと首の後ろに手を回され、チュッとキスをされた。
「フ、ロイド君!」
「んふふ♡ やっとチュー出来た♡」
「もう……え? ちょっと……!」
「ねぇ……ダメ?」
「ダメって何が……あっ!」
ベッドに転がっていたフロイド君が私とその場所を入れ替えると、私を組み敷きながら真剣な男の人の表情で見下ろしてきた。その表情を見てドキドキと胸が高鳴るのを感じつつも、番だと言われたけれど出会ってそんなに経っていないし、彼は思春期男子。更には陸に上がったばかりの人魚さん。そういう事を考えて頭に浮かんだのは〝陸のそういう事に興味があるだけ〟だった。彼のように見目麗しい容姿を持っているのであれば、私が相手でなくても良いんではないだろうかと思ってしまい、彼の逞しい胸をグッと押し返していた。
「クマノミちゃん?」
「あ、その……今、女の子の日だからそういうのは出来なくて……」
「オンナノコノヒ? それって何?」
「えっとね? 人間の女の子はお腹で赤ちゃん育てるのは知ってる?」
「うん。それが関係あんの?」
フロイド君と転がっていたベッドに向かい合って座ると、きょとんとしたまま私を見る彼に、女の子の日がどういうものかの説明をする事になった。彼と体の関係を持つことを避けるために吐いた嘘から、彼に陸の性教育をする事になるとは思わなかったけど、まぁ、彼の今後を考えたら必要な事だったと思う事にして説明を始めた。
「女の子のココには子宮っていって、赤ちゃんが産まれるまで育てる部屋があるのね? その内側に赤ちゃんがそこで育つためのお布団の役割をしてくれる子宮内膜っていうのがあるの。でね? 女の子は一か月に一個赤ちゃんのもとになる卵を出すんだけど、その卵が男の子が持ってる精子と出会わなければ、赤ちゃんのためのその部屋は血と一緒にリセットされるの。それが女の子の日って私が言った生理って言われるものだよ」
私の説明で分からなかったら後で調べてみてね? と伝えると、彼は股から血が出てるって事? と顔面蒼白になり、心配そうな表情を見せた。本当の生理中だと、お腹の痛みと腰の痛みでいつも死にそうになっているんだけれど、今日のは噓なのでどう言い訳をしようかと考え、とりあえず一日目だから今日はまだ大丈夫という事にして誤魔化し、彼と交代で入浴を済ませると、先にベッドに転がっていたフロイド君の隣に寝転んだ。
「クマノミちゃん、大丈夫?」
「え?」
「クマノミちゃんが風呂入ってる間に自分でも調べたんだよね? 生理って腹痛くなったりするんでしょ? 大丈夫?」
「お風呂入ってポカポカだし、大丈夫だよ?」
私を心配してくれるフロイド君を騙している罪悪感を感じながら、彼から少し離れて隣に転がっていると、フロイド君は私をその長い腕の中に閉じ込めた。あったかい、いい匂いする。彼の胸元に頬を寄せて目を閉じ寝る体勢に入っていると、彼の綺麗な手に前髪を上げられたのを感じた。なんだろうと彼を見ると、額にしっとりとした少し冷たい唇がチュッと触れ、そのまま今度は私の唇に重なった。
「おやすみ、クマノミちゃん」
「おやすみ、フロイド君」
互いに就寝の挨拶を交わして目を閉じると、少しして彼の規則正しい寝息が聞こえてきた。きっとラウンジの仕事で疲れたんだろうなと、あどけない年相応の表情で気持ち良さそうに眠っている彼を暫く見つめ、満足した私もゆっくりとその目を閉じた。
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