『かけがえのない時間』
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「よし! 皆がお風呂入ってる間に作っちゃおう!」
高専へと戻って来た私達は、みんなで買ってきた食材をテーブルに置いたり、冷蔵庫へと仕舞うと、そのまま彼らをお風呂に向かわせ、私は手を洗って調理に取り掛かった。何で一緒に入らないのかというと、今朝女の子の日になってしまったからだったりする。
「マグロは漬け丼用のタレに漬けたし、後のお刺身はお皿に乗せて用意しといて、お味噌汁作っちゃおう!」
白菜、大根、人参とこんにゃくを出してくると全て短冊切りにして下準備をする。水を張った鍋に粉末の出汁を入れて火にかけて、沸騰したら白菜の分厚くて白い部分と人参と大根を一緒に煮込む。それらが柔らかくなった頃にこんにゃくと白菜の葉の部分を入れ、ひと煮立ちさせてから味噌を溶き入れた。小皿におたまで一掬いして味見をすると、いい感じの味に仕上がっていた。
「こんぶ」
「あ、棘君早いね?」
「ツナマヨ」
「今? お味噌汁の味見してたんだよ? 棘君もする?」
「しゃけ」
おたまで掬った味噌汁を小皿に入れて彼に差し出す。辛くない? と問うと、高菜と返ってきたので、良かったと笑ってみせると、物陰からニヤニヤしながらこちらを見ている悠仁君とパンダ君が視界に入った。
「お前達傍から見たら新婚さんみたいだぞ?」
「うんうん」
「なっ?! 変な事言わないで!!」
「えー? でも香葉先輩みたいな奥さんなら俺欲しいけどなぁ?」
「年上を揶揄うもんじゃありません!」
もう! と彼らに背を向けると、丼の準備を始める事にした。ご飯はまだ入れないけれど、器だけでもと食器棚から取り出した。
「棘、うかうかしてると悠仁に香葉持っていかれるぞ?」
「……おかか」
「え? お前それ本気で言ってんのか?」
「しゃけ」
「(そうなったら仕方ないなんて言ってるが、全然仕方ないって顔も雰囲気もしてねぇんだよなぁ……)世話が焼けるな……」
「パンダ君何か言った?」
「何もねぇよ」
ワシャワシャとパンダ君の手に頭を豪快に撫でられ、クシャクシャになった髪を直し、手を洗って棘君達にご飯の量を聞いてよそっていると、野薔薇ちゃんと真希ちゃんも合流した。全員でいただきますをして食べ始めると、お刺身の争奪戦が始まった。何となくそんな気がしたから多めに作ったんだけど、食べ盛りだもんね?
「ちょっと! 伏黒!! それ私のタイなんですけどぉ?!」
「早い者勝ちだろ?」
「真希先輩! それ俺のサーモン!!」
「あ? 残念だな? もう私のもんだ」
このまま殴り合いとかにならなかったらいいけどと思いつつ、黙々と食べてる棘君に声を掛け、足りてるかと確認を取る。足りなかったら私のお刺身あげればいいし。
「棘君、お刺身足りてる?」
「しゃけ しゃけ」
「マグロならまだココにあるから食べていいよ?」
「「「「マグロ?! 贔屓反対!!!!」」」」
「え?」
贔屓したつもりはなかったけれど、確かに棘君にしかマグロがある事を言わなかった時点で贔屓になってしまう気がし、ごめんね? と謝ると、みんなは顔を見合わせて、まぁ、仕方ないよねぇ? と口元に手を当ててまたニヤニヤと笑っていた。
「随分賑やかだねぇ?」
「なんでいるんですか?」
「遊んでねぇで仕事しろよ」
「先生お土産は?」
「あ、おかえりなさい! 出張は終わったんですか?」
「もぉー! 香葉だけだよ。僕に優しいの! ねぇねぇ僕の彼女にならない?」
「え?」
「「こぉぉおんの淫行教師がぁぁぁあ!!!!」」
五条先生にギュッと抱き締められ、よしよしと頭を撫でられていると、そのまま自分のものにならないかと言われ、何を言われたのか理解が出来なくてキョトンとしていると、野薔薇ちゃんと真希ちゃんが五条先生を締め上げていた。あの最強がフルボッコじゃん。あんなんで大丈夫なのかな? と、思いつつふと前を見ると、棘くんが私を背に庇うように立ってるし、パンダ君と恵君と悠仁君も今のは悟/先生が悪いと呆れていた。
「だってさぁ? 棘ばっかりズルいじゃん! 僕だっておっぱいの大っきい優しい女の子とイチャイチャしたい!!」
「大人なんだからそういう店のおっぱいの大っきい姉ちゃんに相手して貰って来いよ……」
「悠仁は分かってないねー? 素人だからいいんじゃないか」
「だからって生徒に手を出そうとすんな!!」
ちぇっと拗ねたように口を尖らせて、学長のトコ行ってくると出て行った五条先生に、野薔薇ちゃんはあんなんが担任とかマジで最悪とゲンナリした表情を浮かべていた。まぁ、呪術師としては凄いけど、人としては難ありって感じではあるしね? と思っていると、棘君に手を引かれ食堂から連れ出された。
「棘の奴、やっと危機感持ったか?」
「傍から見たら絶対両想いなのに、本当焦れったかったぁぁぁあ!!」
「いや、まだ告白とは限らないかもしれないですよ?」
「「「「…………ありえる」」」」
***
「棘君? どうしたの?」
「……」
「ココだとまた皆がニヤニヤしながら見に来て話しにくいかもだし、部屋で話そうか?」
「しゃけ」
棘君の大きく温かい手を引いて自室へと招き、向かい合ってどうしたのかと問うと、彼と繋いだままの手をギュッと握られ、驚きでビクッと肩を揺らしてしまった。よく考えたら好きな人と二人きりで、手まで繋いでいるなんて! あぁ、どうしよう顔が凄く熱い。
「……こんぶ ツナマヨ」
「え? 五条先生のものになるのかって? ならないよ。私ちゃんと好きな人いるもん」
あぁ、好きな人がいる事を言ってしまった。どうしよう、もうバレてると思って告白するべきなのかな? でも、早とちりで振られたら死んじゃいそう。一人であれこれ考え込んでいると、グッと棘君に手を引かれて、気付いたら彼の腕の中に収まっていた。
「と、と、棘君?!」
「……」
「えっと、あの……私、棘君の事が……」
「山桜桃、いるか?」
「は、はい!」
一見華奢に見えるけれど、ちゃんと男の子だと思えるしっかりした棘君の腕の中から出て、部屋の外から声を掛けてきた硝子さんにどうかしたんですか? と扉を開けながら問い掛けると、私の顔が赤かった事と、一緒に居たのが棘君だったからか、ふーん? と何か言いたそうな表情を浮かべると、処置の手伝いをして欲しいと頼んできた。それに分かりましたと答えると、棘君と部屋から出て、廊下を歩くが会話はない。
「山桜桃。悪いんだが消毒液が残り少ないからストックを取ってきてくれないか?」
「分かりました! 二本位でいいですか?」
「あぁ。悪いな」
棘君にまた後でねと手を振り、硝子さんのお使いを遂行する為に、消毒液が置いてある倉庫へと一人で向かった。
「邪魔して悪かったな?」
「……おかか」
「で? ちゃんと言ったのか?」
「……おかか」
「狗巻、女から言わせるなよ?」
「しゃけ」
「ふっ、それでいい。これでもお前達の事は応援してるんだからな? 早く山桜桃をものにしろよ」
「しゃけ」
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