『かけがえのない時間』
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「ごめんね? 棘君。付き合って貰っちゃって」
「こんぶ」
「ふふ。ありがとう。もう喉は大丈夫そう?」
「しゃけ」
「そっか、良かった」
今日は本当は真希ちゃんと買い物に行こうって約束をしてたんだけど、急な任務が入ってしまったらしい。任務なら仕方ないよねと今日のお出掛けを諦めようとしたら、真希ちゃんは私の代わりは棘に頼んどいたと言い残してパンダ君と任務へと行ってしまった。え? 棘君に頼んだの? それってもしかしてデート? いやいやいや、ただの買い物! ただの買い物だから! 舞い上がっちゃダメよ私。
「ツナマヨ」
「え? あ、そこのお店行きたいの?」
「しゃけ」
「いいよ? 入ろっか」
普段棘君がどんなお店に入ってるのか分かるから、真希ちゃんに感謝だなと思いながら店内を見て回っていると、店員さんに話し掛けられて困っている棘君の姿が視界に入った。きっと普通に会話が出来ないから、何も言葉が発せないんだろうなと彼に声を掛ける。
「棘君、大丈夫?」
「しゃけ」
私の後ろに隠れるようにして店員であるお姉さんと距離を取った彼に、大丈夫だよ? と笑い掛けると、店員のお姉さんを見上げて何かあったのかと問い掛けた。すると、彼女はバツが悪そうに視線を逸らして何にもなかったと口にし、試着も出来ますからと案内しただけだと告げた。その言葉に棘君が、おかか こんぶ! と否定し、連絡先を教えて欲しいと詰められたと口にした。
「え? 連絡先を教えて欲しいって言われたの?」
「しゃけ」
「何よ。あなた別に彼の彼女じゃないんでしょ? ならいいじゃない」
「そ、れは……」
確かに店員のお姉さんの言う通りなんだけど、棘君は困ってるしどうしようかと思っていると、カランカランと音を立てて店の戸が開き、見知った声が耳に届いた。
「ほら! やっぱり香葉先輩だったじゃない! 賭けは私の勝ちだから! クレープ虎杖の奢りな!」
「わーったよ! 先輩達も買い物?」
「あ、うん」
「香葉先輩、今日は荷物持ちいっぱいいるから真希さんの分もいっぱい買い物しましょ!」
「え? あ、待ってよ! 野薔薇ちゃん!」
「ほらほら、狗巻先輩も行こうぜ!」
「しゃけ しゃけ」
彼女の綺麗な手に掴まれ、私をグイグイ引っ張っていく野薔薇ちゃんに引き摺られるようにその店を出ると、同じように悠仁君に背を押されながら店から出てきた棘君と目が合い、何だか面白くてふふっと笑ってしまった。その後は少し離れた場所で待っていた恵君とも合流して色んな店に入って、小腹が空いたらしい野薔薇ちゃんに言われて、悠仁君がクレープを奢ってくれたけど私まで良かったんだろうか?
「あの、払うよ?」
「いいよ! 香葉先輩に払わせたってバレたら俺が釘崎に殺されるから」
「でも、野薔薇ちゃんと二人での勝負だったんでしょ? なら……」
「俺、クレープも奢れないようなダサい男にはなりたくないからさ?」
だから奢られててよ! と笑ってみせる悠仁君に、それじゃ遠慮なく頂くね? と返した。こういう所を見ると、この子は器が大きいんだなと実感する。あれやこれと買い物して気付いたら男子にたくさんの荷物を持たせていた。まぁ、ほとんど野薔薇ちゃんの物なんだけど。 疲れ切っている彼らを休ませる為にカフェに入ると、さっきの事が未だに残っていたらしい野薔薇ちゃんが開口一番毒づいた。
「ていうか、まだムカつくんだけど! あの程度の女が狗巻先輩に言い寄るなって思うんだけど! 鏡見て出直して来いよって言ってやれば良かった!!」
「そう? 大人っぽい人だったよ?」
「何処が?! あんなのケバいだけじゃん! 香水も臭かったし、鼻がひん曲がるかと思った!」
野薔薇ちゃんの怒りは収まらないようで、さっきの店員さんに対してそこまで言わなくてもと思う程の罵詈雑言に苦笑する。まぁ、棘君顔整ってるしね? 女の子が寄って来るのは仕方ないとは思うんだけど、正直なところ嫌だなと思う。まぁ、片想い止まりの私がそんな事を思った所でどうにもならないんだけど。
「なぁなぁ、夕飯の買い出ししてそろそろ帰ろうぜ?」
「そうだね? 今日何食べたい?」
「え?! もしかして香葉先輩が作ってくれんの?!」
野薔薇ちゃんの反応にうんと頷いて答えると、ふわトロのオムライスもいいし、肉もいいよなぁ、俺は魚と悠仁君達が話しながら歩く姿を後ろから付いて行きながら見ていると、ふと隣にいる棘君は何が食べたいんだろうと思った私は彼に何が食べたい? と聞いてみた。
「……こんぶ」
「お魚が良いの? お刺身? 焼き魚? 煮付け?」
「ツナマヨ」
「お刺身か……なら海鮮丼とかどう?」
「しゃけ しゃけ」
嬉しそうに頷く彼にこちらまで嬉しくなる。海鮮丼の具は何が良いかと彼と話しながら歩いていると、前を歩いていた悠仁君が戻ってきて、なになに? 夕飯のメニュー決まったの? と声を掛けた。それに今日は海鮮丼にしようと思うと伝えると、サーモン乗せたい! 鯛がいい! など要望を伝えて来るので全部乗せようかと言うと、やったー! と無邪気な反応を見せる一年生達と一緒にスーパーへと向かった。
「サーモンと、鯛と、マグロと……」
後は適当に具を買って自分でカスタマイズして貰えばいいかと、いくら、ホタテ、甘エビ、イカ、タコをカゴに入れる。海鮮丼だからお味噌汁も欲しいよね? と冷蔵庫の中にあった物を思い浮かべてみる。大根と白菜と人参とこんにゃくがあったな? 使い切りたいし全部入れちゃお。味噌汁も決まり、皆何処にいるかなと通路を見ながら歩いていると、お菓子売り場に集合しているのを発見した。やだ、可愛い。気付かれないようにカメラを構えて撮ると、保存する。よし、とポケットにスマホを仕舞うと同時に私に気付いたらしい彼らが私を呼んだ。
「あ! 香葉ママ! 俺コレ!」
「ママ?!」
「ママー! 私コレー!」
「しゃけ しゃけ!」
「も、もう! 棘君まで悪ノリして!!」
「ほら、伏黒も香葉ママに買ってって言わないと買ってくれないわよ?」
「俺を巻き込むな!」
「恵君、無理しなくていいよ?」
野薔薇ちゃんと悠仁君にニヤニヤ笑いながらそう言われた恵君は、暫く悩んだ末にボソッとママ……と呟くように告げ、その恥ずかしそうな表情と言い方にキュンとして、優勝と泣きながら彼の左手を掴んで挙げた。
「さて、おふざけはこんなトコにして行こっか!」
「「はーい!」」
各々が食べたいお菓子をカゴに入れると会計を済ませ、みんなで分担して袋を持つと、スーパーを後にした。ちょっと重いなと袋を持ち直そうとしたら、そのまま棘君にそれを取られ、こんぶとお菓子しか入ってない軽い物を渡された。
「え? これ持つの?」
「しゃけ」
「でも、棘君もいっぱい持ってくれてるし……」
「おかか」
「……ありがとう」
「釘崎!! お前ちょっとは香葉先輩みたいな優しさ見せろよ!!」
「はぁあ?! 何で私が荷物持ちしなきゃなんないのよ!!」
ギャンギャンと口論を交わす野薔薇ちゃんと悠仁君を、喧嘩するほど仲がいいって言うのかな? と思っていると、恵君にアイツらのはそういうんじゃないですよって言われてしまった。どことなく真希ちゃんと憂太君の関係に近い感じがするんだけどなぁ? まぁ、一番近くで見てる恵君が言うんだから違うんだろう。
「なんだ? 随分大荷物だな、お前ら」
「あ、真希さんだ!」
「真希ちゃん、パンダ君、任務お疲れ様! それと、おかえりなさい!」
「「おう! ただいま!!」」
元気に帰ってきた二人に安堵しながら、みんなで一緒に高専へと帰宅した。
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