『かけがえのない時間』
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「真希ちゃん、ここ間違ってるよ?」
「あ? 何処?」
「ココ」
「あ」
「真希ちゃんが間違えるなんて珍しいね?」
自習と言われたのでみんなで机を寄せ合って勉強をしていると、向かい側に座っていた真希ちゃんの解答に間違いを見つけたのでその事を伝え、間違える事が珍しいと笑うと、そういう事もあると言われてしまった。
「香葉は座学出来るけど、体術苦手だよな?」
「ゔっ……だって……」
そこで言葉を切って少し下を向くと目に入るのは、そんなに成長しなくて良かったのにと思わずにいられない胸。全くなくなって欲しい訳じゃなくて、もう少しその栄養を身長へと届けて欲しかったと常日頃から切実に思っている。
「まぁ、香葉も弱い訳じゃねぇし、大丈夫だろ?」
「しゃけ」
お母さんもお父さんも強いから、頑張れば私も! とは思うけど、いかんせん鈍臭いからさっきのように何も無いところで良く転ぶのだ。任務中は大丈夫なのに、何でだろうなぁ? と思考を飛ばしていると、授業終了のチャイムが鳴った。
「私ちょっと飲み物買ってくるね?」
「香葉、私のもな? いつものだぞ?」
「んじゃ、俺も」
「えー! もう、しょうがないなぁ……棘君は?」
「棘、香葉に持たせたらまたすっ転んで炭酸ブチ撒けそうだから一緒に行け」
「しゃけ」
棘君と一緒に自動販売機がある所に向かって歩いていると、彼のスマホに任務の連絡があったようで、ごめんと言いたげに手を合わせて駆け出して行った。それをいってらっしゃい、気を付けてね? と見送り、結局一人かと足を動かした。
「棘君が任務って事はまた喉痛めて帰ってくるよね? 何か喉にいい物ないかな?」
呪言師である彼の任務後の声はいつもガラガラで、ちゃんと喉スプレーを用意しているのは知っているけど、やっぱりどこか声が出しにくそうなのだ。差し入れははちみつを使った飲み物にしようかな? と思いながら歩いていると、見た事がない男の子に声を掛けられた。
「あれ? どっから入って来たの? もしかして迷子?!」
「違っ、あの……!」
「なにしてんだ、虎杖」
「あ、伏黒! この子が迷子みたいでさ?」
「は? 迷子?」
そう言って私を見下ろした恵君は、青褪めた顔をしてすいません!! と謝ると、虎杖と呼ばれた男の子の頭をグーで殴り付けた。ゴツって凄い痛そうな音したけど大丈夫かな?
「いってーな! 何だよ、伏黒!」
「この人は二年生の山桜桃香葉先輩だ!」
「えー?! マジで?」
「「マジで」」
恵君と一緒にそう答えると、すんませんしたー! と頭を下げられた。うん、素直ないい子だ。改めて自己紹介を彼にすると、彼も自己紹介をしてくれた。悠仁君と面識がないのはどうやら私と海外にいる憂太君位らしい。私が面識がないのは、姉妹校交流会の前に風邪を拗らせて硝子さんに絶対安静を言い渡されていたからだと分かった。そういえば女の子の一年生がいると真希ちゃんから聞いてるけど、まだ会ってないから早く会ってみたいなぁと思っていると、こちらに向かって駆け寄って来る足音が聞こえ、その足音の主が悠仁君の背中に向かってチェストぉぉお! と強烈な蹴りを叩き込んだ。
「いってぇぇぇえ!! 何すんだよ! 釘崎!」
「あ″ぁん? ジュース一つ買いに行くのにどんだけ掛かってんだてめぇはよぉ!!」
「あ、あの……止めなくていいの?」
「アイツらはいつもあぁだからいいんですよ」
「で? 伏黒と話してるそのロリ巨乳は誰よ?」
「ロリ巨乳……」
悠仁君をお尻の下に敷いて私と恵君を見たその女の子に、外に出た際に良く言われる事を言われてしまい、やっぱりそう見えるのかと苦笑すると、初めまして! と彼女に声を掛け、二年の山桜桃 香葉です! と自己紹介をすると、彼女は悠仁君の上から下りて私の前に立った。
「一年、釘崎野薔薇」
「あなたが真希ちゃんが言ってた一年生かぁ! 会いたかったから嬉しい!」
よろしくね? と彼女の柔らかくスベスベの手をキュッと握ると、バッと視線を逸らされた。手を握られるの嫌だったのかな? 手、握られるの嫌だった? と彼女を見上げれば、あ、いや、そのと言葉を詰まらせていた。その様子を見た悠仁君は何故かニヤニヤしてたけど、それに気付いた野薔薇ちゃんの拳が彼の鳩尾にクリーンヒットしたらしく、廊下に倒れ込んでいた。
「香葉! おっせーぞ!」
「あ、真希ちゃん!」
「なんだ悠仁達と話してたのか」
「うん! 自己紹介とかしてたんだ!」
「お? なになに? 皆で仲良くお話中? 僕も混ぜて欲しいなぁ?」
「わ! 五条先生!」
急に何処からともなく現れた五条先生に頭を撫でられ、香葉にあげるね? と棒付きのキャンディを渡された。ゔぅっ、子供扱い。美味しいけど。
「あ、そうそう。午後から一、二年合同で練習するよー?」
「マジで?! やった!」
ワクワクした表情を浮かべながら恵君と真希ちゃんと話す悠仁君を見て嬉しそうだなぁと笑っていると、野薔薇ちゃんがパンダ君にぜってぇ泣かす!! とリベンジ宣言していた。みんな血の気が多いなぁと苦笑していると、五条先生から午後の集合時間を言われ、そのままみんなでお昼ご飯を食べに行くため食堂へと向かった。