『かけがえのない時間』
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「ふぅ……」
「香葉先輩、手伝うぜ」
「ありがとう、悠仁君」
みんなでご飯を食べて使った食器を洗っていると、悠仁君が戻って来て手伝いを申し出てくれた。確かにいつもの倍はありそうな食器量に、一人ではちょっとしんどいかなと思っていたところだったので、その申し出を有難く受け取り、彼には私が洗った食器を拭いて仕舞って貰うように頼むとおう! と元気のいい声が返って来た。
「ご飯、美味しかった?」
「めちゃくちゃ美味かった! 特にアレ! 豚の角煮がとろっとろでめちゃウマだった! 狗巻先輩も食えたら良かったのに……」
「そうだね? でも、任務だから仕方ないよ」
他愛ない会話をしながら片付けている時に、そう言った悠仁君に苦笑しながら任務だから仕方ないと答えると、彼に今度は狗巻先輩がいる時にまたやろうぜ! と明るい笑顔で言われ、それにそうだねと笑って返すと、気付けば片付けは終了していた。
「悠仁君、お疲れ様。お茶淹れようか?」
「いや、釘崎と伏黒待たせてるからまた今度!」
「そっか。手伝いありがとうね」
「んじゃ、おやすみ」
「うん、おやすみ」
ダッと走っていった悠仁君に、普通の学校なら廊下を走るなって怒られてるだろうなって苦笑しながら、自分用に淹れたお茶に口を付ける。任務に出ている彼は怪我をしたり、無茶をしていないだろうかと思っていると、どうやら口に出ていたようで、食堂の入り口に凭れながらニヤニヤと笑っている硝子さんに揶揄われた。
「棘君、怪我してないかな……」
「愛しの旦那が心配か?」
「しょ、硝子さん!! 旦那じゃないです!!」
「心配しなくても今日の任務はそこまで大変なものじゃないってクズが言ってたぞ?」
「でも……任務中は何があるか分からないじゃないですか」
「まぁな?」
咥えていた煙草をその細い指に挟み、ふぅーと紫煙を吐き出した硝子さんに、私も早く任務行きたいと伝えると、今週いっぱい我慢しろと言われた。
「ねぇ硝子さん、反転術式ってどうやるんですか?」
「何だ山桜桃、覚えて私の手伝いでもしてくれるのか?」
「使えるようになればそれも確かに出来るようになるでしょうし、任務での生存率も上がるかなって。一応回復薬は作れますけど、軽傷だったり体力回復がメインの薬なんで、重傷だと使えないし……」
だから出来るようになれるならなりたいです! と伝えると、こればっかりはセンスだろうからなと苦笑された。それは硝子さんに言われなくても、何となくそうなんだろうと思っていた。でも、やれるだけやってみたい。
「出来なくてもいい! やれるだけやってみたい」
「山桜桃……」
「クックックッ……良いんじゃないの? 教えてあげれば。僕にはお前の説明じゃ全然分からなかったけど、香葉なら分かるかもじゃない?」
「五条先生……」
「それに、香葉が出来るようになればお前の負担も減るし、いい事ばっかじゃん」
ね? やらせてみれば? 暫く任務も行けないんだし? と、先生の後押しもあって、明日から硝子さんの手伝いをしながら教えて貰えることになった。出来る事が増えるように頑張らないとと意気込んでいると、ほどほどにな? と硝子さんに頭を撫でられた。
***
「山桜桃、そうじゃなくてヒュー、ヒュンだ」
「ヒュ―、ヒュン……うーん……なんかもう少しで分かりそうなんですけど……」
硝子さんに教えて貰い始めて三日が過ぎた。
もう少しで感覚は掴めそうなんだけれど、まだこれといった成果は現れていない。でも、まだ始めて三日だ。そんな簡単に出来るようになれるとは思っていないし、硝子さんにもほどほどにと言われているから、少し息抜きに教室の方へと顔を出す事にした。きっと今頃みんなで集まって雑談でもしているだろうし。
***
「誰か香葉見てねぇか?」
「香葉先輩? 見てないけど……」
「そういえば……さっき硝子さんと一緒にいましたよ?」
「手伝いか?」
「それもあるけど、今硝子さんに反転術式教えて貰ってるんだよ」
「「「「香葉/先輩」」」
やっほーとみんなに手を振りながら教室に入ると、久しぶりに会う棘君と目が合った。ゔぅ……久しぶりに会うとどういう顔をしたら良いのか分からない。彼とこうして会うのは、あの保健室のスキンシップ過多な棘君以来なのだ。ここまで会わないとは思ってなかったので、彼から隠れるようにスッと真希ちゃんの後ろに身を潜めた。
「逃げられたな、棘」
「おかか」
「で? 反転術式は出来そうか?」
「何か感覚はもう少しで掴めそうなんだけど……やっぱり難しいね? 硝子さんと憂太君がいかに凄いのかを実感した」
「でも、香葉先輩ももう少しで出来そうって感じなんだろ? なら、絶対出来るようになるって!」
「悠仁君……」
彼の言葉にそうだねと笑って答えると、各々に任務の連絡が入り、教室からみんないなくなった。一人になっちゃったなぁと思っていると、私にも連絡が入った。暫く任務はナシだと先生が言っていたけれど、そうも言ってられない事態になったらしい。一人で任務かと思っていたら、流石にそれはしなかったようだ。昇降口に棘君が立っていた。
「棘君? もしかして私と一緒の任務?」
「しゃけ」
「そっか! 足手まといにはならないように頑張るね?」
「こんぶ 高菜」
「無理はしないから大丈夫だよ? 念の為ユズも連れて来てるし」
心配そうな表情でこちらを見る彼に笑ってみせると、行こうと彼に声を掛けて、私達が来るのを待っているだろう補助監督の元へと向かった。
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