『かけがえのない時間』
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「あ、真希ちゃーん! おはようー!」
「あ? 香葉か?」
「しゃけ!」
「え?! と、棘く、わっ!」
ある日の早朝、教室へと向かう為に廊下を歩いていると、見慣れた背中を見掛け、その後ろ姿に声を掛けながら駆け寄ろうとしたら、後ろから棘君に声を掛けられ、驚きで足が縺れて前に倒れ込んだ。ドシャッと盛大に前へとすっ転び、強打した腹部と膝の痛みに動けずにいると、真希ちゃんとパンダ君が慌てたように駆け寄ってきてくれた。
「香葉、早く起きろ!」
「そうだぞ~? じゃないと棘に淡いピンクのエロ可愛い紐パンずっと見られちゃうぞ~?」
パンダ君の言葉で慌てて体を起こし、その場にぺたりと座り込むと、顔から火が出そうな程恥ずかしいのを我慢しながら、私の後ろに呆然と立ち尽くしている棘君へと言葉を投げかけた。
「……み、た?」
「……しゃけ」
「……パンダ君、何て?」
「見たってよ」
「だよね?!」
あーもう!! と、両手で顔を隠し、恥ずかしすぎて穴があったら入りたい。本当に鈍臭いのをどうにかしたい。よりによって片想い中の棘君に見られちゃうなんて!
「『もうヤダ。何で転んじゃうの?! いつもこんな下着穿いてるって思われてたらどうしよう!!』とかって思ってるんだろうが、気にしなくていいんじゃねぇか?」
更にはパンダ君に私の心の中を覗いたのか? と聞きたくなるような言葉を言われ、ただただ驚いたのと同時にそのモフモフの胸元に顔を埋めた。今更ながら恥ずか死ぬ、無理。ギュッと抱き着いていると、パンダ君はそのまま二年の教室へと向かって歩き始めたようだった。足音を聞く限り真希ちゃんの隣に棘君がいて、その後ろにパンダ君と彼に抱き付いている私という感じだろう。
「今日は自習だろ?」
「今日も、な?」
「しゃけしゃけ」
「先生も一級術師だから忙しいし仕方ないよ……そういえば憂太君元気かなぁ……」
正面から抱き付いていたのを止め、彼の腕に座るようにして運んで貰っていると、ふと海外出張中の同級生の事が頭を過り、どうしているかなと気になった事もあり、後で連絡してみようかなと思っていると、パンダ君に棘より憂太の方が良いのか? とヒソヒソと言われ、違うよ! と慌てて否定した。その声が大きかったのか、先を歩いていた二人が驚いたように振り返り、居た堪れなくなってパンダ君のバカ! と彼の腕から飛び降りると教室へと駆け込んだ。
「お前、香葉に何したんだよ」
「いや、ちょっと男の趣味について聞いてみただけ」
「はっ! 大丈夫だ。パンダは相手にされねぇから安心しろ」
「しゃけ」
「なっ?! お前ら失礼だな! パンダ舐めんなよ?!」
教室の自分の机に火照った頬を付けながら、廊下から聞こえてくる元気な仲間たちの声に耳を傾ける。こうしてたら本当に普通の高校生なのになと、想いながらぼんやりとグラウンドの方へと視線を向けた。
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