『ウサギとウツボの鬼ごっこ』
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「ティノ、ココはこっちの公式だよ」
「なるほど! だから途中までは解けても最後まで解けなかったのか」
「ティノさん、ここのスペルも間違えてますよ? aじゃなくoです」
「あ……たまにやっちゃうんだよね……」
リドルとジェイドの間に座らせて貰い、私よりも賢い彼らに指摘を受けながらも有意義な授業中を過ごしていると、ポケットに入れたスマホが震えた。誰だろうと取り出して確認すると、先ほど多感な思春期女子のお尻を触ってきたセクハラウツボのフロイドからだった。私が教室にいないからか何処にいるの? という連絡で、それにあえてジェイドといると返すと、彼の方にも連絡が入った様で、イタズラを思いついた子供のような悪い顔を一瞬浮かべると、手早く連絡を返していた。ジェイドに何て返したの? と問う間もなく、再びフロイドから連絡が入ったのでメッセージを開くと、ホワイトシクリッドちゃんの浮気者!! と返って来た。一体フロイドに何を言ったんだろうと、ニコニコと楽しそうに笑っているジェイドをチラッと見ると、頑張って下さいね? と何とも不思議な応援をされたのだった。
*******
「ホワイトシクリッドちゃん!!」
「……なに?」
「何でジェイドと一緒なの?!」
「ジェイドと一緒っていうか、リドルと一緒にいるから必然的にジェイドとも一緒になるだけなんだけど……」
次の授業が錬金術だというリドル達と共に移動する為に、教室を出て廊下を並んで歩いていると、後ろからグッと腕を引かれると同時にセクハラウツボが私のあだ名を呼んで引き留めてきた。それを振り払いながら冷たい瞳で彼を見上げると、彼は自分の片割れと私が一緒に行動している事が気に入らなかったようで、ムスッとした表情を浮かべながら何でなのかと問うてきた。その事にリドルと共に行動する事にした事、その為彼と同じクラスのジェイドとも必然的に一緒になる事を伝えると、オレも行く! と私に覆い被さるようにして引っ付くと、そのまま付いてきた。
「フロイド、さっき錬金術の授業じゃなかったの?」
「ホワイトシクリッドちゃんが受けるならもっかい受ける……」
「ちゃんと白衣とゴーグル持ってる?」
「なくてもいい……」
「危ないからダメ! 取りに行かないなら一緒に受けさせない」
「……取りに行くから付いて来て?」
「ジェイド、君の兄弟だろう? 一緒に行っておあげよ」
私が二人きりになるのを戸惑っているのを察したらしいリドルにそう言われたジェイドは、仕方ありませんねと私からフロイドを引き離すと、騒ぎ立てる彼の首根っこを掴んで引き摺るように廊下を歩いて行った。その様子を見ながら申し訳なく思っていると、リドルに頭を撫でながらティノは気にしなくて良いんだよと言われ、コクッと頷くと彼と共に錬金術の授業へと向かった。
*******
「おい。この仔犬の事はトレイン先生から聞いているが、お前の事は何も聞かされてないぞ? リーチ弟」
「ホワイトシクリッドちゃんが受けるから来ただけ~。別にちゃんと白衣もゴーグルも付けてるから良いじゃん」
「コイツの事はお前らが管理しろ。いいな? リーチ兄・ローズハート・ティノ」
「「「はい」」」
今日は四人グループでの錬金術らしく、私達のグループの残り一人の枠に入ろうと思っていたらしい面々が、思わぬフロイドの登場にあからさまに残念そうな表情を浮かべていた。その様子を見て、確かにジェイドとリドルがいればまず失敗はなさそうだもんね? と鍋を混ぜながら口にすると、フロイドには呆れた表情をされたし、ジェイドには本当に鈍チンなんですね? とクスクス笑いながら言われた。何でディスられたの? 私。
「出来た!! すごい……キラキラだ……」
「うん、いい出来だね」
「クルーウェル先生に提出に行きましょう」
「ホワイトシクリッドちゃん、行こ?」
「あ、待ってよ!」
フロイドの大きな手に引かれながらクルーウェル先生の元に向かうと、手の平サイズの光を反射してキラキラと眩い光を放っている今し方出来上がったものを、彼のいる教卓へとそっと置いた。すると、先生は私とフロイドが置いたものを一つずつ指先で摘まんで光に翳すと、その綺麗な口元をフッと緩め、私の頭をその大きな手で撫でながらグッドガール! と褒めてくれた。わしゃわしゃと撫でる先生にされるがままになっていると、フロイドが自分の方へと私を引き寄せ、先生の手から引き離した。
「クックック……大事なものならちゃんと逃げられないようにするんだぞ? 仔犬」
「オレ犬じゃねぇし、言われなくても逃がすつもりなんてねぇし!」
「? 何の話?」
「まずはオスとして見て貰う事からのようだな? リーチ弟」
「うっせぇな……頑張ってるとこだし!」
先生と言い合いをしているフロイドを彼の腕の中から見上げていると、リドルにこっちにおいでと手を引かれた。その手に従うようにフロイドの腕の中から抜け出ようとしたら、それは許さないというようにギュッと再び彼の腕の中へと引き戻された。さっきよりも抱き締める力を強めたフロイドに苦しいと抗議すると、オレのなのに金魚ちゃんのとこ行こうとするからじゃん! と怒られた。そんなフロイドをクスクスと笑って見つめるジェイドと、リドルとジェイドが提出した物を査定しながら同じく笑っているクルーウェル先生に、あんまりリーチ弟を苛めてやるなよ? 仔犬と言われてしまった。え? 苛められてるの私なんですけど? と言いたかったけれど、それは言葉にはしなかった。
「お前達の評価はA+だ」
「やった~!」
「良かったですね? ティノさん」
「まぁ、ボクがいるんだから当然の評価だよ」
「うんうん! みんなのお陰だよ! 本当にありがとう」
「ホワイトシクリッドちゃん、じゃあご褒美頂戴?」
私の目線と合わせるようにイスに座ったフロイドに両手を柔らかく握られ、ねぇ? いいでしょ? と少し首を傾げてそのヘテロクロミアで私を見つめて来た。幼児のようなその問い方に可愛いなと思いつつ、何が欲しいの? と彼に問い掛けると彼は待ってましたと言わんばかりにニヤッと笑ってみせた。その表情を見て、まずいと思ったけれど後の祭りで、彼は私の耳元で『ホワイトシクリッドちゃんが欲しい』と呟いた。
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