『ウサギとウツボの鬼ごっこ』
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「待ってよホワイトシクリッドちゃーん」
「無理無理! 何で毎日追い掛けて来るの?!」
「そんなのホワイトシクリッドちゃんが逃げるからじゃん」
「ひぃいっ!! あ!! トレイ先輩助けてっ!」
丁度良く向かい側から歩いてきた我が寮の副寮長、トレイ先輩を盾にして彼の後ろにその身を潜めた。彼にしがみ付きながらビクビクとその身を震わせていると、私が掴んでいる彼のジャケットに震えが伝わってしまったのか、彼は私を見下ろしながら優しい声で大丈夫だと告げた。
「フロイド、ティノがウサギの獣人なのは知っているだろ? コイツは怖がりな性格だからあまり追い回さないでやってくれ」
「えー……ホワイトシクリッドちゃん足はえーから追いかけっこすんの楽しいんだけど」
「いつもみたいにリドルとしたら良いじゃん!!」
「金魚ちゃん体力もねぇし、足もそんなに速くねぇからすぐ追いつくからつまんねぇもん」
頭の後ろに手を置いてそう話すフロイドを、トレイ先輩の後ろからキッと睨むと、なぁに? また追いかけっこする? とその左右の色が違う瞳を細めながら言われたので、全力で拒否を示すように首を左右にプルプルと振った。
「おや? フロイドとトレイさんにティノさんでしょうか?」
「ジェイドじゃん、何してんの?」
「トレイン先生の所へ課題を提出しに行ってきたんですよ。皆さんは何を?」
「ジェイド! フロイド何とかしてよ!」
「フロイドが何かしたんですか?」
「ははは……今日もティノを追い回していたみたいでな?」
「なるほど。だから彼女はトレイさんにしがみ付いてらっしゃるんですね」
ふむと私を見下ろすジェイドに、片割れを何とかしてくれと頼んでみたが、思考がフロイドと似ている彼にそれを頼んだところで無意味なのは分かっていた。だって、彼も私を見下ろしながらさっきのフロイドと同じように瞳を細めていたのだから。
「フロイド、ティノさんとの追いかけっこは楽しいですか?」
「超楽しいよ? ホワイトシクリッドちゃんめっちゃ足はえーから全然捕まえらんねぇんだよね」
「それはそれは、ぜひ僕とも遊んで欲しいものですね」
「ひっ……!」
「こらこら。コイツは怖がりだって言ったばかりだろう? それにコイツをあまりいじめ過ぎるとウチの女王様が黙ってないぞ?」
「あー……確かに金魚ちゃんホワイトシクリッドちゃんの事可愛がってるっていうか甘いかも」
確かにお茶会の時はたくさんお食べってケーキをいっぱいくれるし、談話室で勉強してたら教えてくれるし、いっぱい撫でてくれるんだよね。他の人から見てもそうなのか。まぁ、私はリドルに撫でられるの好きだからありがたいけど。
「ほら、そろそろ次の授業が始まるぞ?」
「え? ヤダ、行かないで! トレイ先輩」
「心配しなくても教室まで送ってやるから」
ほら、行くぞ? と私の手を引いて歩くトレイ先輩の大きな手に安堵していると、後ろでチッと舌打ちが聞こえた気がするんだけど気のせいだよね? チラッと後ろを振り返ると、ジェイドに凭れ掛かるようにして歩いていたフロイドと目が合い、ヒラヒラと手を振られたので空いている手で振り返してやると、ぱぁあと嬉しそうな表情を見せた。何その顔、かわいいな。
「ほら、着いたぞ?」
「トレイ先輩、わざわざありがとうございました」
「あぁ。今日は何でもない日のパーティーがあるから忘れるなよ?」
「はい!」
「ははっ! いい返事だな? じゃあまた放課後な」
私の頭をよしよしとその大きな手で軽く撫でると、トレイ先輩は踵を返して廊下の向こうへ歩いて行き、その背中が見えなくなるまで見届けた私は、ルンルンと上機嫌で教室へと足を踏み入れた。そして、自分の席に戻ると丁度やって来たトレイン先生の魔法史の授業を受けた。
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