『たまには』
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ナイトレイブンカレッジ内の寮の一つ、オクタヴィネル寮。その中にある学内カフェ、モストロ・ラウンジでここ数日見受けられる攻防。本日で三徹目になる彼の目元にはくっきりとした隈が出来ていた。それを見兼ねた男は嘆息しつつ、未だに書類に目を通す事を止めない相手に声を掛けた。
「アズール……いい加減寝て下さい」
「まだやる事が山積みなんだぞ! 寝てられるか!」
「仕方ありませんね……フロイド」
「オッケー♡」
フロイドと呼ばれた男は待ってましたと言わんばかりに、嬉々として転がっていた質のいいソファーから立ち上がると、ちょっと行ってくんね? とラウンジから出て行った。どこに行くんだと思いながらも、書類から視線を外さないその男に長身の男は再び嘆息すると、それを取り上げた。
「……ジェイド、返せ」
「イヤです」
「もう少しで何か閃きそうなんだから邪魔するな」
「そのあなたの閃きそうで閃かない案で既に丸一日潰れているんですよ? 一度寝てスッキリした頭で考えなおして下さいと言っているんです」
「僕はまだ眠くないです!」
目の下に隈を作り、目が霞むのか目頭をしきりに押さえる彼、オクタヴィネル寮寮長兼モストロ・ラウンジの支配人をしているアズールを見下ろし、この分からず屋がと思いつつ、副寮長であるジェイドは蟀谷を押さえて本日何度目かになる溜息を吐いた。
「まぁ、彼女が来ればあなたも寝るでしょう」
「誰が来ようと僕は寝ない!」
「はぁ~い♡ フロイド商店のデリバリーでっす! アズールにお届け物でぇ~す♡」
そう言ってドサッとソファーに下ろしたのは小柄な少女で、キャッと短い悲鳴がその小さな唇から漏れた。もう! 女の子の扱いが雑! と、ソファーに適当に下ろされた少女は自分を連行した男をキッと睨むと、サラサラとして指通りのよさそうな銀色の髪を整えた。ふぅと息を整えると、目的の人物がいる方へと向くと、にっこりと笑ってみせた。
「フロイド、何故彼女をここに?」
「このままだとあなたがいつまでも睡眠を取らないので、僕がシェリーを連れて来るように言ったからです」
「アズール、おいで?」
「…………」
「ふーん……。アズールは来ないみたいだからフロイドおいで?」
アズールが動こうとしないのを見て、シェリーは自分を連れて来たフロイドへと声を掛けた。それを聞いたフロイドは、やった! と、彼女の方へと歩み寄ると、そのまま彼女の白く柔らかい膝へと頭を乗せようとしたが、それはアズールの背後から出現したタコ足に阻まれた。
「……そこは僕の場所だ」
「はいはい、オレとジェイドは部屋で寝るからごゆっくり」
「ではシェリー、アズールを頼みましたよ?」
「うん、二人もお疲れ様。ゆっくり寝てね?」
「おやすみぃ~」
ラウンジから出て行った二人を見送ると、シェリーは再びアズールへと手を広げ、おいで? と声を掛けた。彼は今度は彼女の誘いを受け、ソファーに座る彼女の膝へと頭を乗せるとその体を横たえた。
「本当はアズールにも部屋で寝て欲しいんだけど、どうする? 部屋行く?」
「……連れて行ってください」
「はいはい」
彼の体をひょいっとその細い腕に抱き上げると、スタスタと彼の部屋を目指して歩き出した。フロイドが連れて来た少女、シェリーはアズールと同じタコの人魚である。人間の姿だと小柄で華奢になるが、力はそのままなので彼を抱き上げて運ぶことなど造作もない。その様子を見慣れている寮生は、また寮長が無理をしたのかという認識だが、初めて見た寮生は困惑を露わにし、事情を知っている寮生にどういう事かと問い掛けるのだった。
「ふふふ。みんな不思議そうな顔してるよ? アズール」
「すぅ……すぅ……」
「ありゃ、寝ちゃってる……」
彼女の柔らかくいい匂いのする胸に顔を埋めて安心したように眠るアズールを見下ろし、可愛いなと微笑しながら歩いていると、いつの間にかアズールの部屋の前に辿り着いていた。
「はい、到着したからベッドに下ろすよ?」
「んー……」
「はい、靴脱いで? 今度は眼鏡取るよ? 次はコートとジャケットね? 最後にスラックス脱がすよ?」
「んー……」
寝ぼけながらもシェリーの指示通りに体を動かすアズールに、こういう所は昔から変わらないなと笑いながら彼の隣にその体を横たえると、彼の腕が体に巻き付いてきた。それを受け入れるように好きにさせていると、シェリーの胸元に顔を埋め、落ち着く場所を探すとすぅすぅと規則正しい寝息が再び聞こえ始めた。
「ふふ……いつもお疲れ様。いっぱい頑張っててエライね? アズール」
フワフワした髪を撫で、ぐっすり寝入っているアズールを褒めると、彼はいい夢を見ているのかフッとその表情を和らげた。彼に抱き締められているシェリーは、マジカルペンを一振りして部屋の電気を消すと、おやすみと深い眠りに就いている彼の額と頬にキスを落とし目を閉じた。
「ん……え……?」
「すぅ……すぅ……」
翌朝、シェリーよりも先に目覚めたアズールは、自分が彼女の胸に埋まるようにして眠っていた事に気付いた。彼女が昨夜、ジェイドの指示で動いたフロイドに連れて来られた事は知っているし覚えている。しかし、アズールの記憶はそこまでしかなかった。起きるべきなんだろうと思いはするが、彼女の柔らかくいい匂いがする胸から顔を上げるのは惜しい。もう少しこのままでもいいだろうかと思っていると、起きていたのだろうシェリーがクスクスと笑いながらアズールの少し乱れた髪を撫でた。
「アズールがむっつりさんって本当なんだね?」
「……誰がそんな事を?」
「フロイド」
「……違いますからね?」
「私の胸に顔埋めて目が覚めても起きようとしなかったクセに?」
「……最近あなたとの時間が取れなかったから充電してたんです」
「ふふ。そういう事にしといてあげる」
二人でベッドに転がってゆったりと過ごしていると、部屋の扉がコンコンとノックされた。誰だと思っていると、扉の向こうから寮生の少し緊張した声音が聞こえ、アズールはチッと小さく舌打ちをすると埋まっていた彼女の胸元から顔を上げ、渋々扉の前へ移動した。そして、ガチャッと開けるとそこにいたのは声を掛けた寮生ではなく、ニコニコと笑みを浮かべたジェイドだった。
「何なんですか?」
「昨夜はお楽しみでしたか?」
「するわけないだろ⁈」
「折角二人きりにしてあげたのに……ヘタレですね」
「うるさいな‼ 僕がいつシようと関係ないだろうが‼」
「そんなこと言っているとシェリーに愛想を尽かされて番を解消されますよ?」
「え……?」
そうなのか? と言いたげに振り向いたアズールに、シェリーは苦笑すると解消したりしないから安心してと笑って返した。彼女の言葉を聞いたアズールはジェイドに大丈夫な事を告げると、欠伸をしながらベッドへと戻った。そして、ベッドに座っている彼女の太腿に頭を乗せ、そのまま横になるとシッシと追い払うように手を動かした。
「今日はラウンジは休みです。来週から嫌でも忙しくなりますから、お前も今のうちにゆっくり休むんですね」
「え? 今日お休みなの?」
「えぇ。今日は業者が入って店内の清掃や設備点検を行うので休みです」
「そうなんだ」
「僕はもうひと眠りする。分かったら早く帰れ」
「おやおや。いつもなら"二度寝なんて"とフロイドにお小言を零しているのに」
「うるさいな! そういう日だってあるんだよ‼」
バンッと扉を勢いよく締めたアズールは、不機嫌を露わにしたままシェリーがいるベッドに戻って来ると、ギュッと彼女の腹部に顔を埋めるように抱き付いた。そんな彼の髪を撫でながら二度寝する? と声を掛けると、一緒に寝てくれるならと言葉が返って来た。それに笑って頷くと、彼女は抱き付いているアズールをそのままにベッドに体を横たえた。
「アズールは疲れきってると甘えっ子になるよね?」
「……こんな僕は嫌いですか?」
「ううん。好きよ?」
「僕もシェリーが好きです」
「ふふ、ありがとう。今日は久しぶりに二人きりでゆっくりしようね?」
「すぅ……すぅ……」
腹部にある彼の髪を撫でながら会話をしていると、再び規則正しい呼吸音が聞こえてきて、もしかして? と体を起こし腹部に視線を向けると、安心しきった無防備な表情で眠るアズールの姿があった。それを可愛いなと微笑して見下ろすと、彼と惰眠を貪る為再び体を横たえて目を閉じた。
「アズール……いい加減寝て下さい」
「まだやる事が山積みなんだぞ! 寝てられるか!」
「仕方ありませんね……フロイド」
「オッケー♡」
フロイドと呼ばれた男は待ってましたと言わんばかりに、嬉々として転がっていた質のいいソファーから立ち上がると、ちょっと行ってくんね? とラウンジから出て行った。どこに行くんだと思いながらも、書類から視線を外さないその男に長身の男は再び嘆息すると、それを取り上げた。
「……ジェイド、返せ」
「イヤです」
「もう少しで何か閃きそうなんだから邪魔するな」
「そのあなたの閃きそうで閃かない案で既に丸一日潰れているんですよ? 一度寝てスッキリした頭で考えなおして下さいと言っているんです」
「僕はまだ眠くないです!」
目の下に隈を作り、目が霞むのか目頭をしきりに押さえる彼、オクタヴィネル寮寮長兼モストロ・ラウンジの支配人をしているアズールを見下ろし、この分からず屋がと思いつつ、副寮長であるジェイドは蟀谷を押さえて本日何度目かになる溜息を吐いた。
「まぁ、彼女が来ればあなたも寝るでしょう」
「誰が来ようと僕は寝ない!」
「はぁ~い♡ フロイド商店のデリバリーでっす! アズールにお届け物でぇ~す♡」
そう言ってドサッとソファーに下ろしたのは小柄な少女で、キャッと短い悲鳴がその小さな唇から漏れた。もう! 女の子の扱いが雑! と、ソファーに適当に下ろされた少女は自分を連行した男をキッと睨むと、サラサラとして指通りのよさそうな銀色の髪を整えた。ふぅと息を整えると、目的の人物がいる方へと向くと、にっこりと笑ってみせた。
「フロイド、何故彼女をここに?」
「このままだとあなたがいつまでも睡眠を取らないので、僕がシェリーを連れて来るように言ったからです」
「アズール、おいで?」
「…………」
「ふーん……。アズールは来ないみたいだからフロイドおいで?」
アズールが動こうとしないのを見て、シェリーは自分を連れて来たフロイドへと声を掛けた。それを聞いたフロイドは、やった! と、彼女の方へと歩み寄ると、そのまま彼女の白く柔らかい膝へと頭を乗せようとしたが、それはアズールの背後から出現したタコ足に阻まれた。
「……そこは僕の場所だ」
「はいはい、オレとジェイドは部屋で寝るからごゆっくり」
「ではシェリー、アズールを頼みましたよ?」
「うん、二人もお疲れ様。ゆっくり寝てね?」
「おやすみぃ~」
ラウンジから出て行った二人を見送ると、シェリーは再びアズールへと手を広げ、おいで? と声を掛けた。彼は今度は彼女の誘いを受け、ソファーに座る彼女の膝へと頭を乗せるとその体を横たえた。
「本当はアズールにも部屋で寝て欲しいんだけど、どうする? 部屋行く?」
「……連れて行ってください」
「はいはい」
彼の体をひょいっとその細い腕に抱き上げると、スタスタと彼の部屋を目指して歩き出した。フロイドが連れて来た少女、シェリーはアズールと同じタコの人魚である。人間の姿だと小柄で華奢になるが、力はそのままなので彼を抱き上げて運ぶことなど造作もない。その様子を見慣れている寮生は、また寮長が無理をしたのかという認識だが、初めて見た寮生は困惑を露わにし、事情を知っている寮生にどういう事かと問い掛けるのだった。
「ふふふ。みんな不思議そうな顔してるよ? アズール」
「すぅ……すぅ……」
「ありゃ、寝ちゃってる……」
彼女の柔らかくいい匂いのする胸に顔を埋めて安心したように眠るアズールを見下ろし、可愛いなと微笑しながら歩いていると、いつの間にかアズールの部屋の前に辿り着いていた。
「はい、到着したからベッドに下ろすよ?」
「んー……」
「はい、靴脱いで? 今度は眼鏡取るよ? 次はコートとジャケットね? 最後にスラックス脱がすよ?」
「んー……」
寝ぼけながらもシェリーの指示通りに体を動かすアズールに、こういう所は昔から変わらないなと笑いながら彼の隣にその体を横たえると、彼の腕が体に巻き付いてきた。それを受け入れるように好きにさせていると、シェリーの胸元に顔を埋め、落ち着く場所を探すとすぅすぅと規則正しい寝息が再び聞こえ始めた。
「ふふ……いつもお疲れ様。いっぱい頑張っててエライね? アズール」
フワフワした髪を撫で、ぐっすり寝入っているアズールを褒めると、彼はいい夢を見ているのかフッとその表情を和らげた。彼に抱き締められているシェリーは、マジカルペンを一振りして部屋の電気を消すと、おやすみと深い眠りに就いている彼の額と頬にキスを落とし目を閉じた。
「ん……え……?」
「すぅ……すぅ……」
翌朝、シェリーよりも先に目覚めたアズールは、自分が彼女の胸に埋まるようにして眠っていた事に気付いた。彼女が昨夜、ジェイドの指示で動いたフロイドに連れて来られた事は知っているし覚えている。しかし、アズールの記憶はそこまでしかなかった。起きるべきなんだろうと思いはするが、彼女の柔らかくいい匂いがする胸から顔を上げるのは惜しい。もう少しこのままでもいいだろうかと思っていると、起きていたのだろうシェリーがクスクスと笑いながらアズールの少し乱れた髪を撫でた。
「アズールがむっつりさんって本当なんだね?」
「……誰がそんな事を?」
「フロイド」
「……違いますからね?」
「私の胸に顔埋めて目が覚めても起きようとしなかったクセに?」
「……最近あなたとの時間が取れなかったから充電してたんです」
「ふふ。そういう事にしといてあげる」
二人でベッドに転がってゆったりと過ごしていると、部屋の扉がコンコンとノックされた。誰だと思っていると、扉の向こうから寮生の少し緊張した声音が聞こえ、アズールはチッと小さく舌打ちをすると埋まっていた彼女の胸元から顔を上げ、渋々扉の前へ移動した。そして、ガチャッと開けるとそこにいたのは声を掛けた寮生ではなく、ニコニコと笑みを浮かべたジェイドだった。
「何なんですか?」
「昨夜はお楽しみでしたか?」
「するわけないだろ⁈」
「折角二人きりにしてあげたのに……ヘタレですね」
「うるさいな‼ 僕がいつシようと関係ないだろうが‼」
「そんなこと言っているとシェリーに愛想を尽かされて番を解消されますよ?」
「え……?」
そうなのか? と言いたげに振り向いたアズールに、シェリーは苦笑すると解消したりしないから安心してと笑って返した。彼女の言葉を聞いたアズールはジェイドに大丈夫な事を告げると、欠伸をしながらベッドへと戻った。そして、ベッドに座っている彼女の太腿に頭を乗せ、そのまま横になるとシッシと追い払うように手を動かした。
「今日はラウンジは休みです。来週から嫌でも忙しくなりますから、お前も今のうちにゆっくり休むんですね」
「え? 今日お休みなの?」
「えぇ。今日は業者が入って店内の清掃や設備点検を行うので休みです」
「そうなんだ」
「僕はもうひと眠りする。分かったら早く帰れ」
「おやおや。いつもなら"二度寝なんて"とフロイドにお小言を零しているのに」
「うるさいな! そういう日だってあるんだよ‼」
バンッと扉を勢いよく締めたアズールは、不機嫌を露わにしたままシェリーがいるベッドに戻って来ると、ギュッと彼女の腹部に顔を埋めるように抱き付いた。そんな彼の髪を撫でながら二度寝する? と声を掛けると、一緒に寝てくれるならと言葉が返って来た。それに笑って頷くと、彼女は抱き付いているアズールをそのままにベッドに体を横たえた。
「アズールは疲れきってると甘えっ子になるよね?」
「……こんな僕は嫌いですか?」
「ううん。好きよ?」
「僕もシェリーが好きです」
「ふふ、ありがとう。今日は久しぶりに二人きりでゆっくりしようね?」
「すぅ……すぅ……」
腹部にある彼の髪を撫でながら会話をしていると、再び規則正しい呼吸音が聞こえてきて、もしかして? と体を起こし腹部に視線を向けると、安心しきった無防備な表情で眠るアズールの姿があった。それを可愛いなと微笑して見下ろすと、彼と惰眠を貪る為再び体を横たえて目を閉じた。
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