短編(絵・ツイート→小説)
空っぽになったコントン都の中央をぼんやりと眺めていると、誰かに肩を叩かれた。
振り返ると、友人が心配そうな顔をして、自分を見つめていた。
「また見てたの?」
「……うん……」
小さな溜め息を吐いて、再び視線を戻す。
そこは、かつて英雄像があった場所。
今はもういない、英雄の像が立っていた場所。
「……先輩、本当に死んじゃったんだなって……」
言葉にすると、また胸の奥が酷く痛んだ。
憧れていたあの人は、もういない。
また涙が零れ落ちそうになるのを堪えていると、友人が、黙ってハンカチを差し出してくれた。
「ありがとう……」
受け取った瞬間、ぽつりと雫が一つ、布の上に落ちた。
自分の涙ではないことにすぐ気が付き、思わず空を見上げる。
また一つ、また一つと落ちてきた雫は、やがて雨になった。
「コントン都で、雨なんて降ったことないのに」
友人とそう言いながら、慌てて屋根のある建物へと駆け込む。
突然の異変に、ちょっとした騒ぎになっていたが、どうやら本当にただの雨らしい。
「誰かが泣いてるのかな、なんて」
茶目っ気を混ぜた友人の言葉に思わず微笑んでいると、視界の端に人影が移り、何気なくそちらへ目を向ける。
「……あ」
小高い丘の上にいる人物を見て、思わず声が漏れた。
銀髪を束ねた青年が、色眼鏡を曇らせながら、空を見上げている。
確か、彼は。
「……あの人、もしかして……」
「……先輩と、よく一緒にいた?」
「うん」
声をひそめて、友人とそう会話する。
青年は黙って暫く雨に打たれていたが、やがて掻き消えるように姿を消した。
それと同時に雨は止んでいき、明るく日が差していく。
「あ……見て」
友人が指差したその先には、大きな丸い、虹がかかっていた。
「…………」
「…………先輩への餞、かな」
「……そう、じゃないかな…………」
本当のことは、わからないけど。
でもきっと、さっきの雨は、あの人が流した涙なんだろうな、と、ぼんやり思った。
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