シオン「聖域の英雄といえども、奴も人の子よな。だが、良い兆候だ。」


アイオロスの失われた１３年間の青春が、これで幾分かは取り戻せようとシオンは思っていた。


童虎「して、肝心の葵じゃが脈はあるのか？」

ムウ「心配はないと思いますよ。幼い頃の口癖が、アイオロスのお嫁さんになる…でしたから。」

シオン「では、近い内に良い報告が聞けるな。」

カミュ「…いえ、それはどうかと…。」


思慮深いカミュの意見に皆が注目する。


バラン「どういう意味なんだ、カミュ？」

カミュ「あれから何度か葵と茶を飲んだりしたのだが、アイオロスの話になると表情が曇るんだ。慕っている人物の話をしているのに、そんな表情を浮かべるだろうか？」


確かにそうだろう。

顔を赤らめたり、恥じらいを見せるのなら微笑ましいのだが…。


シュラ「…後ろめたいのだろうか。」

アフロ「後ろめたい？」

シュラ「サガとアイオロスの間にあった事が、彼女の内にも影を落としているのかもしれない。」


シュラの言葉には重みがあった。

それは、とてつもなく重い事実であり、シュラ自身もそれに関係しているからだろう。

しかし、アイオロス本人はすでに過去の話だと公言し、シュラやサガとも親交を深めているはず。

葵と再会した時も気にする必要はないと言ってくれたのに。


シャカ「彼女はとても繊細な心の持ち主だ。兄の犯した罪を自分も背負うべきだと考えてもおかしくあるまい。幼い頃からずっと考えていたのなら、尚更だ。」


慕っていた人を兄が手にかけた事実を知った彼女なら、そのようになっても仕方ない。

いくら被害者本人が許しても、彼女の心は完全に解き放たれていないのだ。


ミロ「…まずは、葵本人の気持ちを知る事だよな。」


ミロの意見は最もだというので、近い内に彼女本人から話を聞こうとなった。