「お姉ちゃん。」

沙織「いらっしゃい、葵。たまには一緒にお茶をしましょう？」

「うん。」


葵は進められた席に付き、沙織は自らお茶の用意をした。

ティーポットから注がれるお茶の香りは、葵の沈みかけていた心を癒してくれる。


沙織「はい、どうぞ。」

「ありがとう、お姉ちゃん。いただきます。」


かつて、城戸邸に２人が居た時もこうやってお茶会をしたものだ。

庭に造られた東屋で庭の景色を見ながら、時には執事やメイドたちも交えて。

黄金達と一緒にお茶会をする事など、今はまだ望めない事だが…。


「お姉ちゃん。明日からまた外に行ってもいい？」

沙織「え？」

「お願いっ。もう転ばないようにするから、明るい内に帰ってくるからっ。」


沙織には当分外出を禁ずると言われたばかりで、不謹慎だと葵も重々承知の上だ。

しかし、この聖域で自分だけができる事を見つけた。

それはとても小さな事で、誰の目にも当たり前の事としか認識されない小さなお役目。

だが、葵はどうしてもそのお役目を全うしたい。

葵のいつにもない真剣な眼差しに何かを感じ取った沙織は、しばらくの思案の後に言った。


沙織「明日は駄目ですけど、そうですね…１週間安静にして居たら外出も許可しましょう。」

「本当！？」

沙織「えぇ。」

「やったぁっ、ありがとう！　お姉ちゃん、大好き！」

沙織「ウフフ。」


抱き付いてきた葵を沙織は優しく抱き返した。