「やだ、やだぁああ！！！」


葵は男達に押し倒され、手足を押さえつけられた。


雑兵「けっ、何がアテナの妹君だ！」

雑兵「そうだ！　憎きハーデスの妃のクセに、よくものうのうと聖域に滞在できるな！」

雑兵「どうせ、聖域を貶めようと斥候の役目を買ったんだろう！」

「ち、違うよ！　違うもん！！」


自分は本当に純粋な気持ちで聖域が心配で、姉である沙織を少しでも手伝えたらとやってきたのに。

ハーデスと聖域の間にある隔たりは、何と深いのだろうか。

このままでは己の身が危ないと思った葵は、仕方なく小宇宙を使って反撃に出た。


『お願い、私の周りに居る植物達！　少しだけ、力を貸して！！』


葵が念じて小宇宙を送ると、植物達が独りでに蠢き出す。

草木の蔓が雑兵達の手足にまとわり付き、動きを封じた。


雑兵「な、何だ！？」

雑兵「まさか、ペルセフォネの能力！？」


雑兵たちが驚いて身動きが取れない間に、葵は必死に身体を起こして走り出した。


雑兵「おいっ、逃げるぞ！」

雑兵「ま、待て！！」

雑兵「覚えていやがれ、ペルセフォネ！！」


薄汚い罵声を聞きながら、葵は無我夢中で逃げていった。