ムウ「シャカ、お邪魔しますよ。」

シャカ「ムウか、何用かね？」


シャカは沙羅双樹の園で座禅を組んでいた。


ムウ「何用とはご挨拶ですね。貴方から依頼されていた、仏具の修理が終わったのでお届けに。」

シャカ「そうかね。…もう１人、客人らしいな。」


その言葉にムウが振り向くと、巨体がこちらへ向かってくる。


ムウ「アルデバランでしたか。どうかしましたか？」

アル「いや、任務が終わったので報告に上がる途中でな。ムウが此処へ来るのを見かけたので、ついつい…。そうだ、シャカよ。頼まれていた土産を買ってきたぞ。」

シャカ「うむ、ご苦労だった。」


アルデバランの持っていた包みからは、茶菓子が出てきた。


ムウ「…こんなにどうするのですか？」

シャカ「神仏に日々の供物として供えるのだが、何か？」


どうせ、その後には貴方の胃袋行きでしょうと言いたいところだが、ムウはシャカと千日戦争をする気は毛頭無く、その言葉を呑み込んだ。

アルデバランはさしてシャカの言葉が気に障る事も無く、沙羅双樹の園を見渡す。

先の聖戦で戦場になり、見渡す限りの荒地に成り果てたこの園はかつて花が咲き乱れ、それは極楽浄土もかくやと思えるくらいだったそうな。


アル「あの少女ならば…、この園を元通りに出来たかも知れんな。」

ムウ「…ペルセフォネですからね。」

シャカ「一度、此処に来たがった事はあった。…断ったがね。今になれば、招待すべきだったかも知れん。」


シャカの表情が一瞬、後悔に歪んだ事をムウとアルデバランは見ていた。

だが、彼らも同じ思いに浸る事しかできず、ただ荒れた大地を見ているだけであった。