セスナから降りると、目の前に止まっているバスから数人の少年が出てきた。


星矢「葵！」

瞬「…お帰り、葵。」

氷河「待っていたんだぜ、葵。」

紫龍「…此処には、もうお前を責める者は居ない。」

一輝「お前の事は、俺達が守ってやるから安心しろ。」


あの、強く優しい少年達がそこに居た。

先の聖戦で、最も辛く長い戦いを経験してきた少年達。

自分がハーデスの妃ペルセフォネと知っても、けして邪険に扱う事はなかった少年達。

例えペルセフォネでも、葵は葵だと言ってくれた少年達。

彼らの優しく包み込んでくれるような小宇宙を感じ、葵はポロポロ泣き出す。


「皆…っ、ぅ…ぅえぇえ………！」


泣き出す葵を囲み、皆が優しく慰めてくれた。


瞬「葵、辛かったね。でも、もう大丈夫だから。これからは、以前のように城戸邸で心安らかに過ごそうね？」

星矢「さ、城戸邸に帰ろうぜ。俺、料理長に頼んで、葵の好きなケーキをいっぱい用意しといてくれって頼んでおいたからさ！」

「グスっ…、本当…？」

星矢「あぁ！　さっ、行こうぜ！」


葵は星矢達と一緒にバスへ乗り込み、数ヶ月ぶりの城戸邸へ帰っていった。

その夜、久々の日本帰国にはしゃぎすぎた葵は夕食後、すぐに眠ってしまった。

彼女が深く眠ったのを見計らい、星矢達は居間で話し出す。


星矢「しかし、今回は流石に俺も我慢できねぇよ。アルデバランやアイオリア、更にはアイオロスまで葵を追い出そうとしていたなんて。」

紫龍「…あの老師やシュラまで、葵の本質を見抜けず…いや、見抜こうともせず…。」

氷河「我が師カミュも、必ず葵の事を理解してくれるだろうと思っていたのに…！」

瞬「…どうして、葵を理解しようとしなかったんだろう？　やっぱり、葵の神格がペルセフォネだったから？　永い聖戦を戦ってきた冥王ハーデスのお妃だから？　そんなの、理由にならないよ。だって、ペルセフォネは優しい女神だもの、葵だってそうなのに…！」

一輝「聖域の奴らは、うわべだけで判断しただけだろう。ペルセフォネ＝危険因子だと最初から決め付けていたんだ。ハーデスの妃と聞けば、それも無理からん事だが…。奴らは葵の小宇宙を感じようとしなかったんだろう。…優しく、慈しみに溢れた葵の小宇宙に…。」


皆の口から漏れるのは、黄金や聖域関係者達への失望と怒りの声ばかり。

事情は既に沙織から聞き及んでいたのだが、葵の表情が曇りっぱなしだったところを見ると、相当心へダメージを受けたのだろう。

そのダメージを癒し、元の明るく可愛らしい葵に戻ってもらう手助けをしなくては。

青銅達はその為に全力を尽くそうと誓い合った。