第５話「青銅と黄金の想い」


ギリシャから飛び立ってどれほど経ったのか…。

葵の視界には、懐かしい日本の地が見えてきた。

ギリシャとはまた違う美しい海、大地、空。


辰巳「葵お嬢様、もうすぐ着陸いたします。」

「はい。」

辰巳「飛行場には、星矢達も出迎えに来るそうですよ。」

「早く、会いたいな。」

辰巳「お嬢様、これからはどうか日本でお心安らかにお過ごし下さい。不肖、辰巳徳丸はじめ城戸家に仕える者全員で、お嬢様をお守りいたします。」

「ありがとう、辰巳さん。」


微笑んでくれる葵の笑顔が、本来のそれではない事を辰巳は分かってしまう。

それほど、聖域で葵は酷い環境に置かれていたのだろう。

沙織の目の届かない場所で、どれほど怖い目に合ってきたのかと考えると腸が煮えくり返る。

沙織と葵の祖父である城戸光政翁が亡くなる前、辰巳は翁から孫娘２人についてくれぐれも頼むと何度も頼まれていた。


翁『辰巳…。ワシが居なくなっても…沙織と葵の事をくれぐれも、頼んだぞ。』

辰巳『旦那様…！　この辰巳徳丸、命に代えましてもお嬢様たちをお守りいたします！』

翁『頼んだぞ…！』


辰巳は、何の罪もない葵を傷つけた聖闘士どもが居る聖域に、彼女を戻さないと心に決めた。

そして、それは辰巳だけではなかったのだ。