「ひっぅ、えぐっ…。」


葵はアテナ神殿に呼ばれ、沙織の膝の上で泣きじゃくっていた。


沙織「葵、ごめんなさいね。私が愚かでした…。まさか、黄金達があのような浅はかな者達とは思わなかったのです…。」

「わ、私…、聖域の、皆に喜んでもらえる事、一生懸命に探したのっ…。聖域のお役に立てたら、皆も少しは、冥界の皆と仲良くなれるかもしれないって、思ってたの…！」

沙織「…ありがとう、葵。」

「でも、でも…、私が居ると、冥界の皆にまで迷惑かけちゃう…！　帰りたいよぅ、日本に帰りたいよぅ…！」

沙織「葵、辰巳に連絡を入れました。明日の朝一番にセスナをこちらへ寄越すように。…日本の城戸邸に帰りなさい。そして、聖域に来るまでの通り、星矢達と過ごしなさい。」

「日本へ、帰るの…？　お姉ちゃんは？」

沙織「私はアテナですから。でも、日本にも必ず帰ります。ね？」

「ぅん…。」

沙織「今頃、女官達が貴方の荷物を纏めている事でしょう。黄金達には見送りも結構、葵が帰るまで宮の奥から出るなと命じましたから、彼らの顔を見る事はありません。安心しなさい？」

「うん…。お姉ちゃん、今日は一緒に眠っていい？」

沙織「えぇ、もちろんですよ。女官達に用意をしてもらいましょうね。」


その夜、葵は沙織と同じベッドで眠りに付いた。

あれからも泣きじゃくった彼女の目は赤く、涙の痕も残ったままで。


沙織（葵、貴方を悲しませる者はたとえ何者であろうとも、私が懲らしめてあげますからね？）


そして、翌朝一番。

葵は聖域から去っていった。

黄金達の望んだ葵聖域退去は、ここに叶ったのである………。


～続く～