そんなある日、葵は自分にも何か出来る事は無いだろうかと聖域を散策していた。

沙織からは１２宮の敷地内から出ないように言われていたので、敷地内にある遊歩道へ足を向けた。


（何か、葵にも出来る事があるはずだもん。何か、お姉ちゃんや聖闘士の皆の為になるような事が…あるはずだもん。ちゃんと仕事を見つければ、皆喜んでくれるよね。）


しばらく遊歩道を歩いていると、葵は足元に可愛らしい花が枯れかけているのを見つけた。

葵はその花の傍にしゃがみこみ、花と対話を試みた。

花はまだ咲きたいと思っているけど、とても自分だけでは無理だと言っていた。

その気持ちを汲み取った葵は、花に両手を優しくかざして小宇宙を送り込んでみた。

するとどうだろう、花は見る見るうちに瑞々しく咲き始めたではないか。

花も葵にお礼を言うと、彼女はハッとした。


「そうだ！　これなら皆に迷惑かけないし、喜んでもらえるよね！」


枯れかけた植物に小宇宙を分け、聖域をいつまでも緑豊かな土地にしようと考えたのだ。

ハーデスが自分の為に造ってくれたエリシオンのように、花や草木、虫や鳥がずっと元気な土地になる事はきっと喜んでもらえる。

葵はそう考えると、目に映る元気の無い植物達の元へ駆け寄り、自らの小宇宙を分け与える事を始めた。

本当に些細な事であるが、植物も元気になるし、元気に咲き誇る植物を見れば聖域の人達も元気になれると思って。

葵は思ったよりも聡い子で、自分が聖闘士たちに警戒されている事を知っていた。

でも、そんな事はこの際関係ない。

聖闘士たちの戦い続ける日々の疲れを少しでも癒してあげたいと、葵は植物達に小宇宙を与え続けた。