サガ（これは別に聖域にとって脅威な行動とはいえぬが…。しかし、どうしてこのような事をしているのだ？）


考えても仕方がないが、サガには気になってしまう。

しばらく後を付いていくと、葵は知らず知らず立ち入り禁止区域の方へ入っていった。


サガ「いかんな、あそこは不安定な崖ばかり。足を踏み外せば命に関わる…。」


サガは早足で葵の後を追った。

サガが禁止区域に入ったと同時に、葵の叫び声が聞こえた。


「きゃあああ！！！」

サガ「ちっ！！！」


サガは光速の動きを持って葵へ接近した。

すると、彼女は崖から落ちそうになっているではないか。

光速の動きを捉えられるサガの目からすれば、葵が崖から落ちていくスピードなどスローモーション。

彼は葵の手を取り、崖から距離を取った。


「きゃっ！？」


葵には何があったのかわからず、ただ何か大きな物に包まれているような気がした。


サガ「お怪我はございませんか、葵殿？」

「サ、サガさん！」


相手がサガと分かり、葵は身体を固まらせた。

顔もこわばらせ、自分を恐れている事が分かる。


サガ（…そんなにも、私が恐ろしいのだろうか。いや、今までの態度からすればそれも当たり前か…。）


微かに悲しげな表情を浮かべたサガだったが、ここは心を鬼にした。


サガ「このような場所で何をなさっておいでなのか。此処は危険区域ですぞ。」

「ご、ごめんなさい…。」

サガ「大人しくできないのであれば、どうぞ今すぐアテナ神殿へお戻りを。」

「い、いえ…。ごめんなさい、もう此処には来ません…。」

サガ「どうぞ、勝手な行動は慎んでいただきますように。では、失礼いたします。」


サガは此処まで言えば葵も危険な場所へは近寄るまいと判断し、帰っていく。

葵はその背中をいつまでも悲しい眼で見ているのであった。