天界、ゼウス神殿の奥深く。

巨大な鏡には聖域の宴の様子が映されていて、鏡の前に２つの影があった。

その２つの影の正体は天界の長ゼウス、その父であり封印されたはずのクロノスだった。

宴の様子を、そして孫娘の姿を愛しそうに見つめていたクロノスに、ゼウスは問う。


ゼウス「我が父クロノス、貴方の真の目的は一体何なのですか？」


クロノスは微笑をたたえ、穏やかな声でその問いに答える。


クロ「ゼウスよ、私はただ愛しい孫娘が大切にされているのか否かをこの目で確かめたいだけだ。私もそうだが、ティタン神族も今は眠りから覚めたいという意志は無い。それに、お前たち３人の男兄弟は一度過ちを犯した。ハーデスもポセイドンも過去の事を思い出しているであろう。ペルセフォネも過去の事を思い出しているだろうが、心優しいあの娘ならばそなたらを拒絶する事もあるまいし、お前達も同じ過ちは繰り返すまい？」

ゼウス「当然でありましょう。ペルセフォネは…我らオリンポスの宝にございますれば。」


ゼウスが真摯な表情で答えると、クロノスは安心したようだ。


クロ「そう、それを確認したかったのだ。思ったよりも大がかりになってしまい、ペルセフォネとコレーにも悪い事をしてしまった…。さて、私の話も目的も済んだ。私はもう一度眠りにつくとするぞ？」

ゼウス「お待ちを。貴方の封印を外から破ったのは一体何者なのですか？」

クロ「あぁ、私の封印を解いたのはとあるミントの精霊だが、極僅かにティタンの血を引いている者でな。私が封印を解くように頼んだのだ。あの娘もハーデスが妻一筋、妻馬鹿という事がわかっていて落ち込んでいるから放っておいてやれ。」

ゼウス「わかりました。この件については不問といたしましょう。」

クロ「そうしてくれるとありがたい。では、また会う時まで息災にな、ゼウス。あぁ、それと…ペルセフォネとコレーに手を出したらどういう事になるか…、分かっておるな？」


クロノスのドスが利いた念押しに、ゼウスは激しく頷いた。


クロ「よろしい。もし、この警告を無視してあの娘達を泣かせる様な事をすれば、ティタン全員でお前限定に仕置きを喰らわしてくれるからな、忘れるなよ？」


クロノスは念を再び押して、封印の壺の中に戻っていった。