第１２話「奇跡の邂逅。」



アベルが空を見上げだして数十分。

流石に、皆が首の痛みを感じている。

それまでに、何度かアベルに何があるか、起こるかを質問しても、彼は笑ってもう少し待てと言うだけであった。


冥王「アベル、一体何事があってここへ我らを集合させたのだ。余たちも自分が統治する世界の執務を放ってきているのだぞ？」

アベル「恐れ入りますが、今しばらくお待ち下さい。」

海皇「アベル、ハーデスは何があるのか聞いている。時間がかかっているのを責めているのではない。」

アベル「こればかりは、私の口からも上手く説明できそうに無いのです。」

沙織「…気に入りませんわ。」

アベル「アテナ、そんなに眉間へ皺を寄せてしまったら、せっかくの美貌が台無しだよ？」


アベルは至極にこやかな笑顔で沙織へ語りかけた。


沙織「お兄様、いい加減になさってください！！　あの子が、ペルセフォネが消滅して、まだ幾日も経っていないというのに、どうしてお兄様はそうやって笑えるのですか！」


沙織はニケをギュウっと握り締めてアベルに向ける。


海皇「余もそれが気に入らぬ。あんなにも悲痛な声で嘆いていたお前らしからぬ態度だ。」

冥王「ペルセフォネに対する貴様の気持ちはそんなものか。彼女が消滅しても尚、貴様は笑えるのか。」


ポセイドンは三叉の槍をハーデスは黒い剣を手にしている。


アベル「お待ちなさい。私はペルセフォネが消滅した事を忘れたわけでも、悲しみが薄れたわけでもありません。それに…そろそろ、来ますよ？」

沙織「え？」


次の瞬間、音も無く、天から柱のように眩い光が一筋降りてきた。

沙織達がそれに気を取られている中、アベルは小さく呟いた。


アベル「思ったより時間がかかったが…、ゼウスがちゃんとお膳立てをして下さったようだ。」