やがてアベルが指定した日。

アテナ神殿の前には、すでに呼び寄せられた者が揃っている。

やはり、皆憔悴しているのは同じらしい。


沙織「皆さん、お揃いですね。」

冥王「アテナ、アベルは何用で我らをここに集めたのだ？」

沙織「ごめんなさい、私も存じません。でも、伊達や酔狂で集めたわけでもないでしょう…。」

海皇「…ハーデス、そなた凍傷は治ったのか？」

冥王「まぁ、何とかな…。」

沙織「温泉で湯治でもなさったら？」

冥王「…冥界でも温泉を掘ってみるか…。」


そして、刻限。

アベルはアテナ神像の足元に降臨した。


アベル「皆、集まってくれましたか。」

冥王「アベル、何事か。」

アベル「…まずは、ゼウスからの伝言です。アテナ、ポセイドン、ハーデス、タナトス、ヒュプノス。」


沙織達は何かしらの命が下ると思ったので、緊張する。


アベル「…そなたらの記憶を操作したのは他でも無いこの自分。そういう伝言です。」

沙織「記憶の操作…？」

アベル「我らはクロノスの術により、過去の天界を見てきました。あれほどの惨事を貴方達だけが忘れていたのは何故だと思いますか？」

海皇「まさか、ゼウスが！？」

タナ「何ゆえ、そのような…。」

アベル「全てはゼウスの計らい。貴方達は得にペルセフォネと仲が良かった。その心の傷を少しでも軽くする為でもあります。そして、未来に起こるであろう同じ出来事の際、死の女神に躊躇せず戦いを挑めるように…。」


可愛い娘を生かしてやりたいとは思っているが、ゼウスはこの世界を守る大神。

娘と世界を天秤にかけ、世界の存続を選んだのだ。