沙織「今回の事で、一番心を痛めているのはハーデスでしょうね…。」

ヒュプ「いいや、今回は順番などつけられないほど、皆の心が痛んでいる。聖域でも、そうであろう？」


聖域でも葵の死が伝わると、悲しみにくれた小宇宙があちらこちらから溢れ出し、それを感じない日は無い。

星矢たちも名残惜しくて日本に帰らず、聖域でずっと過ごしているのだから。


タナ「それにアテナ、お前も悲しいはずだ。ペルセフォネ様とは異母姉妹、城戸葵とも異母姉妹。神としても人としても悲しいはず。…あまり無理をするな。」

沙織「ありがとうございます、タナトス…。」


沙織も未だ彼女の死を受け入れられず、お茶の時間になるとつい名前を呼んでしまう。

呼んでしまってから、彼女は既に居ない事を思い出し、悲しみにくれる。

彼女のお気に入りだった茶器もずっと置いてあって、これを使う者がもう居ないと思うと、いたたまれない。

至高のアテナが悲しみにくれる姿を見て、女官達も悲しみの涙を零す。

女官達も葵が使っていた部屋を２日に１度は掃除をしていて、いつでも使えるようにしていた。


沙織「あの子は死にました…。ですが、不思議なものですね。あの子の墓標を建てようとは未だに思わないのです…。心のどこかで、あの子とまた会えると思ってしまうのです…。」

タナ「うむ…。それよりもアテナ、そなたの所にヘルメスが行かなかったか？」

沙織「ヘルメス…ですか？」

タナ「冥界にはつい先日来たのだ。」


ヘルメスは天界の使者、彼が伝える言葉はゼウスによるものが多い。


沙織「いいえ、お会いしてません。」

ヒュプ「我らに書状を預けた後に、海界へも行くと言っておったが…。」


今更、聖域を無視して２つの世界に書状を送る事などありえない。


沙織「お父様にも考えがあるのでしょう。さぁ、今日の議題ですけど…。」


引っかかる事はあったが、沙織は冥界との協議に入っていった。