クロノスの封印と、ペルセフォネの消滅から２週間。

ペルセフォネが司っていた春の女神としての役割は、母であるデメテルが代行しているようで地上には影響は出ていない。

しかし、１週間前までは世界各地で異常な寒さを記録し、草花が枯れている姿が目立っていた。

天界からの話によれば、最愛の娘を最悪の形で失ってしまったデメテルは１週間の間、ずっと泣き続けていたのだという。

寝食を忘れ、ひたすら泣き続けていたデメテル。

それを見かねたゼウスは、このような有様を見ればペルセフォネが悲しむと説得し、デメテルに務めを果たすように促した。


アベル「ゼウス。」

ゼウス「アベルか、如何した？」

アベル「デメテル伯母上はペルセフォネのお役目を？」

ゼウス「…あぁ。１週間も泣き続けていたが、今の地上を見ればあの子が悲しむと言って、やっとだ…。」

アベル「無理もありますまい、あんなに仲睦まじかった母娘でしたから…。」

ゼウス「ヘラたちも折を見てはデメテルの所へ見舞いに行っている様なのだが、皆で泣きながら慰めあう感じらしい…。」

アベル「父上も…あまり顔色が優れません。どうか、少しでもお休みになってくださいませ。」


アベルがここへ来たのも、アポロンやヘルメスたちからゼウスの憔悴振りを聞いての事だ。

天界に住まう全ての神がペルセフォネの死を悼んでいるが、その親であるゼウスも悲しみは大きいはず。

しかし、仮にも天界を収める大神。

彼は感情を表に出す事無く、黙々と執務に没頭し、悲しみを忘れようとしているのだ。


ゼウス「時に…アテナたちは如何しておるのか？」

アベル「…ペルセフォネが消えてから２週間たった今でも、その悲しみが薄れる事はございません。アテナ、聖闘士、ポセイドン、海闘士、ハーデス、双子神、冥闘士…。皆、折に触れては彼女を思い出し、涙しているようです…。」

ゼウス「そうか…。」