冥王「ならぬ…！　ペルセフォネ、行ってはならぬ！」

《ハーデス…。》

冥王「余は、何度お前を目の前で失えばよいのだ！！　凍てついた余の心に、暖かい春の木漏れ日のような愛を教えてくれた、お前を…何度…。」

星矢「…っ、沙織さん！！　何か方法は無いのかよ！？　このままじゃ、本当に…！」


沙織はただ、辛そうな表情を見せるだけ。


カノン「ポセイドン！　貴方にも何か策は無いのか！？」

海皇「…失われた小宇宙はあまりに膨大。それを補おうとすれば…、三界にある全ての小宇宙を注ぎ込んでも足りるかどうか…。」

アイコ「そ、そんな。」

アベル「今からでも、天界へ赴いてゼウスに小宇宙を補って頂くか…！」

童虎「それでは時間がかかりすぎる！　その場しのぎでも良い、我らの全小宇宙をペルセフォネに与えよう。」


しかし、当のペルセフォネは首を横に振る。


《もう…、どんな手立ても功を奏することは無い…。それに、皆の小宇宙を私に注いでしまったら、皆が危なくなる…。この世界の、秩序が乱れる…。それは、駄目…。》


声ももう、力が入っていない。

ペルセフォネは最後の力を振り絞り、ハーデスに抱きついた。


《ありがとう、ハーデス。貴方に会えて、貴方に愛されて、私はとても幸せだっ…た。》

冥王「ペルセフォネ！！」


やがて、限界が訪れた。

彼女の身体からは光の粒子が飛び散り、その姿は完全に消滅する。

先ほどまで、強くペルセフォネを抱きしめていたハーデスの両腕の中には、もはや何も残っては居なかった。


冥王「また…、また守れなかった…。命より大事な愛する妻を、誰よりも傷付きやすいもう１人の妻を…、余はっ、余は………！　ペルセフォネェええええ－－－－－！！！！」


荒涼とした大地に、冥王の慟哭が響き渡る。

その嘆きの小宇宙と共に………。


～続く～