第１０話「本当の気持ち。」



黒い渦に呑み込まれた沙織達だったが、先ほどまでクロノスと対峙していた場所へ戻ってこれた。

目の前には死の女神とクロノスが立っていて、やはり先ほどの事は過去の出来事だったと皆が少し安心したが、それも一瞬の事。

先ほど見てきた過去の出来事の中、死の女神が抱えていた辛く悲しい本当の気持ちを知った今、沙織たちには死の女神へ反撃する意思がなくなっていた。

誰もが思った、これがクロノスの知略なのだと。

死の女神が抱えていた気持ちを知らしめ、戦闘不能にし、自分へ有利な方へ事を運ぼうとしているのだと。


《何処かへ飛ばされていたようだが、ようやく戻ってきたか…。では、続きをするとしよう。まずはアテナ、お前の首を貰い受ける！！！》


大鎌を高く頭上へ振り上げ、小宇宙を込めて振り下ろした。

小宇宙はまたも黒い波動となって、沙織へ一直線に飛んでいく。

沙織はニケを握り締めていたが、避けるどころか結界を張って攻撃を防ごうともしない。


《何！？　そのまま攻撃を受けるつもりか、アテナ！！！》


あと数メートルで沙織に直撃する所に来て、死の女神は黒い波動を急いで消した。


沙織「…何故、攻撃を消すのですか？」

《な、何だと…？》

沙織「貴女は言ったはずですよ？　私の首を貰い受けると。ならば、先ほどの攻撃はまたとないチャンスでしょう？　何故、攻撃を中止したのですか？」

《っ…！》


死の女神は沙織の強い眼差しに射抜かれたようになり、動けなくなった。

攻撃の手を止め、再度攻撃を仕掛けようともしない死の女神に業を煮やしたのか、クロノスは声を荒げた。


クロ《何をしているのだ、ペルセフォネ。アテナ如き小娘、早々に蹴散らすが良い！》


しかし、死の女神はアテナへの攻撃を躊躇している。

沙織はクロノスの言葉もさして気にせず、尚も死の女神に語りかけた。