戦闘は過酷で熾烈を極めていた。

アベルの口伝ではとても想像できない激しい戦闘だ。

特に死の女神は誰彼かまわずに攻撃するものだから、戦闘要員でない神々にも多数の負傷者が出ていて、天界の花園は一気に血の匂いで充満した。

しかし、死の女神もゼウスたちもお互いに消耗が激しく、肩で息をするほどだ。

沙織達はただその戦闘の凄まじさに言葉を失っていた。


沙織「…このような激しい戦いだったのですか…。」


ふとその時、またもや誰かの声が脳裏に響いてくる。


《何故だ…、何故、妾を邪険にするのじゃ…！》


その声の主は間違いなく、死の女神ペルセフォネだった。

今の表情では想像もできないくらい、悲しげで苦しげな声。

皆がその声に耳を傾けると、彼女の苦しい胸の内が聞こえてきた。


《何故、妾を受け入れてくれぬのじゃ…！　ゼウス、デメテル、私も貴方達の御子ではないのか！　この凄まじい力とて、好きで手にした訳でもないと言うのに…！》

イオ「何と、悲しげな感情なのだろう…。」

バイ「あぁ、何か…悲痛な叫びだ。」

《妾を受け入れてくれるのは、もう１人の妾だけ…！　ならば、妾を受け入れてくれぬ者は全て滅ぼしてくれる！　妾を受け入れぬ者たちなど、妾は要らぬ！》


その言葉に沙織達も愕然とした。

死の女神は何も好きでオリンポスに戦いを挑んでいる訳ではないのだと、初めて知ったから。

彼女はゼウスやデメテルを始めとした大勢の神々が、忌まわしい力を持った自分だけを受け入れない事を悲しみ、嘆き、苦しんで悩んだ末にオリンポスを破壊しようとしているのだから。