ザワっ－－－－－！


沙織達は体中の神経が刺激されたように、身震いがした。

アベルの表情が強張り、ペルセフォネを凝視している。


沙織「お兄様、まさか…。」

アベル「そのまさかのようだ、アテナ。」

海皇「ここはまさか、過去の天界か！？」

アベル「そのようです、叔父上。そして、今から起こるのです、忌まわしきも悲しい過去…。死の女神ペルセフォネの復活が。」

冥王「これが、真実の歴史なのか…。」


春の陽だまりのような小宇宙が、段々とドス黒い物に変わっていく。


《な…に？　私…、どぅ…？》

冥王「ペルセフォネの声が、聞こえにくくなっている。死の女神が、目覚めつつあるというわけか。」

沙織「我が父ゼウスも…この事態に驚いているようですね…。」


見れば、ゼウスの表情も驚きに染まり、彼の周りに天界に居る神々が集いつつあった。

その間にも、ペルセフォネの髪の色が金色に変化し、その輝きとは対照的に小宇宙は黒く染まる。


ロス「これから、起こってしまうのか…。オリンポス最大の悲劇が…。」

ミロ「葵っ…。」

童虎「止せ、ミロ。」

ミロ「しかし、老師！！　このままでは、葵が…葵が！」

童虎「良いか、ミロ。今の我々は過去の記憶を見ているのじゃ。今は耐えて、真実を見届けるしかあるまい…。」

シャカ「クロノスは、我々に見せ付けるつもりなのだよ。己を滅ぼしたオリンポスが犯した過ちを。そして、ここに居る神々に精神的なダメージを与えようとしているのだろう…。」

リア「我々には、何も出来ないのか！　このまま、葵が倒れ行くのを見届けるしかないのか！？」

デス「…多くの死を見てきたが、こればっかりは見たいと思わねぇな…。」

サガ「許されるのなら、今ここで葵に駆け寄り、助けてあげたい…。」

カノン「ここに居る全員がそう思っているさ、サガ…。」

アル「…見るしか出来ないというのは、辛いな…。」

ムウ「ですが、見届けるしかないのでしょうね…。人間である私達には。」