だが、些か様子がおかしい。

目の前に沙織達が居るにも関わらず、ゼウスはそれを通り越して何かを見ていた。


沙織「我が父ゼウス…？　あの…？」

海皇「おかしいな、まるで我らが見えていないかのようだ。」

冥王「どれ、余が試してやろう。」


ハーデスは前に進み出て、利き腕をグルグル回す。


タナ「ヒュプノス、ハーデス様はまさか；」

ヒュプ「あぁ、ブン殴るつもりだろう；」

クリ「なんと、大神ゼウスをブン殴るなどとは…！　まさに神を恐れぬ所業よ…。」

アイコ「いや、ハーデス様も神だから；」


ハーデスはボクサーのようにファイティングポーズを取り、タイミングを計る。


冥王「悪く思うな、ゼウス！」


ハーデスの拳がゼウスの顔面めがけて飛んでいく。

まともに入れば、ゼウスの顔もベコベコにへこんでしまうだろう。

だが、大半の予想は外れる。


スカッ。


ラダ「ハーデス様の拳が…すり抜けた！？」

サガ「な、何故だ；！？」


さらにゼウスが歩みだし、ハーデスの身体をすり抜けて何処かに行ってしまう。

慌てた皆がそれを追いかけている中、沙織だけは今の状況を把握しようと考えていた。


沙織『ハーデスの拳がゼウスからすり抜け、ゼウスも私達に気付いておられぬご様子…。そして、ここに私達を送り込んだのは他ならぬクロノス…。まさかっ！』