第９話「過去への旅。」



それは、誰もが…神であるアテナ達ですら跪いてしまうほどの、威圧的で強大な小宇宙だった。

そこに現れたのが何者であるか、その場の全員がそれを悟れるほどの者。

この世界にこれだけ強大な小宇宙を持っている者は早々いない。

そう、今永き眠りから覚めた…かつて天空と大地の全てを支配していた大神、クロノスだ。


海皇「我ら兄弟の父…。」

冥王「クロノス…。」


しかし、クロノスは沙織達に戦いを挑むような気配も無く、この場の状況を把握しようと周囲を見回している。


クロ《お前は、我が息子ゼウスの娘アテナだね？》

沙織「え、ぁ…はいっ。」

クロ《今はお前達と事を構えるつもりはない。ただ、この子としばらく２人きりにしてはくれまいか？》

沙織「なっ…。」

海皇「断る。」

クロ《ポセイドン…。》

冥王「貴方はペルセフォネの力を利用して、我らオリンポスと再び事を構えるおつもりか！？　我が妻をそのような事に使われるくらいなら、貴方と刺し違えてでも。」

クロ《ハーデス、この娘がお前の妻なのか…？》

沙織「我が祖父、クロノス神。どのような理由があれ、貴方とペルセフォネを２人きりになどさせません。話があるならば、我らも同席させていただきます。」


その瞬間、今まで淡い笑みさえ浮かべていたクロノスから表情が消え失せた。


クロ《ならば仕方あるまいな。この子と話が纏まるまで、お前達には過去にでも行ってもらおう。》


クロノスが左手を真っ直ぐ横に伸ばすと、何も無かった空間から黒い渦が現れた。

それは一瞬で大きくなったと思うと、クロノスとペルセフォネだけを残し、その他全員を呑み込んでいく。


沙織「くっ、このままでは！」

海皇「結界が効かん！」

冥王「おのれ、クロノス！」


抵抗も虚しく、沙織達は黒き渦に呑み込まれていった。