それはいつの頃だったか思い出せないほど、遥かな昔。

それでも、昨日の事のように鮮明に思い出せるほど、神々に悲しみを与えた出来事だった。


アベル「その頃のペルセフォネは、性格や立ち振る舞いは今とほとんど変わる所が無かった。ただ、今より少しボンヤリしていて、母であるデメテル様の過保護のせいか、世間知らずな女神だった。」

沙織「今も昔も、変わっておりませんのね。」

アベル「そんなペルセフォネと一番仲が良かったのはアテナ、お前なのだよ？」

沙織「私、ですか？」

アベル「あぁ。女神やニンフ達なら一緒に花摘みや会話を楽しむのだけど、男神が近づこうものならば、睨みを利かせて跳ね除けていたからね。」

ヒュプ「今とあまり変わらないな。」

沙織「おだまり、三流神。」

アベル「フフッ、アテナはゼウスですらペルセフォネに近づく事を嫌っていたよ。あぁ、でも特に近寄らせなかったのはハーデスだね。他の男神が近づけば密かに牙をむく感じで追い払っていたけど、ハーデスはあからさまに追い払っていたよ、ニケの杖で突っついてね？」

沙織「おそらく、父上を近づけなかったのはペルセフォネに手を出して身篭らせるような事があってはならないと思ったからですわ。ハーデスは…言うまでもありませんわよねぇ？　まぁ、突っつくだけで済んでよかったですわね、全小宇宙を込めて叩いたり、前の聖戦のように貫いたりすれば、ペルセフォネが悲しみますから？」


ジト目でハーデスを睨むが、ハーデスは明後日の方向を向いてしまう。

全小宇宙で叩かれた日には、ハーデス自慢の美しい肉体が二目と見れなくなるだろう。

ハーデスは心の中で『助かった！』と安心する。


アベル「だけど、そんなある日…悲劇が起きたのだ。」