アベルの冷酷とも言えるその方法に、三界の闘士たちは激昂して乱暴に立ち上がった。

皆、アベルに殺気を剥き出しにして唸っている。

だが、それだけでは治まり切らない何名かがアベルの元へ向かい、彼を取り囲んで事もあろうに掴みかかった。

デスマスク、アイオリア、ミロ、カノン、アイアコスが神であるアベルに掴みかかる。


デス「てめぇ…、今何て言いやがった！」

リア「もう一度言ってみろ！」

ミロ「貴方は葵を哀れだと思わないのか！？」

カノン「地上とペルセフォネを救う方法が、彼女を殺す事だけだと…！？」

アイコ「そんなのは救いじゃないだろう！？」


掴みかかりはしないものの、普段は冷静クールで通している者も自分を抑えきれない。


シュラ「神には肉親への情という物が無いのか！」

カミュ「貴方はそれでも、葵の…ペルセフォネの兄なのか！？」


アベルは投げつけられた暴言も、掴みかかっている闘士たちの手も甘んじて受けていた。

だが、相手は恐れ多くもアテナの兄アベル。

他の闘士たちは何とかして掴みかかっている仲間をアベルから引き剥がし、距離を取った。

だが、その連中の瞳にもアベルに対する怒りがありありと映っている。


沙織「アベルお兄様、過去には如何様にこの事態を収めていたのですか…？」


アベルの発言にも無言で通し、様子を見守っていた沙織が口を開いた。

アベルはその答えを知っているだけに戸惑ったが、ゼウスからも話す許可を得ている。

ゼウスの様子を見るように空を仰ぎ、やがて語りだした。

アテナ、ポセイドン、ハーデス、ヒュプノス、タナトスが知らない悲劇。

でも、彼ら以外の神なら誰もが覚えている、オリンポス神族最大の悲劇を。