天界・オリンポス。

聖域の出来事を水鏡で見ていたゼウスとアベル。

その表情は硬く、苦悶に似た表情でもあった。


アベル「我が父ゼウス。クロノス神の封印の状態は如何でございますか？」

ゼウス「今はまだ微弱ではあるが、封印に亀裂が生じておる…。ペルセフォネの今の状態、クロノスの封印の状態、それらを見ておる限り、１ヶ月以内に事は…起きてしまうだろう。」

アベル「それだけしか時間は残されていないのですね…。私はアテナたちにこの事を知らせに参ります。」

ゼウス「頼む。アテナや兄たちにも辛い宣告ではあるが…知らせぬ訳にはいかん。場合によっては、『あの時』のような事態もやむなしと伝えてくれ。」

アベル「…承知しました。では…。」


悲痛な表情を浮かべたアベルがゼウスの部屋から出て行くと、いれちがいでデメテルが入ってきた。


ゼウス「デメテル、如何したのだ？」

デメ「あなた、ペルセフォネの様子は如何です…？」

ゼウス「おそらく、１ヶ月以内には…。」


ゼウスは酷と思いつつも、正直に事の次第を話した。

最悪、『あの時』の再現になるだろうという事も。

娘を溺愛するデメテルにとっては、それは身を引き裂かれるよりも辛い宣告であり、泣き崩れるであろうなとゼウスは考えていた。

しかし、デメテルは気丈にも涙を流す事はない。


デメ「私はペルセフォネの母。ただ泣いて過ごす訳には参りません。最後まで諦めずに、あの子を助ける方法を探し続けます。」


そう言うと、デメテルは今までになく強い眼差しを持って、ゼウスの部屋を後にしていった。


ゼウス「可愛い我が娘よ…、そなたの母はやはり大地の女神。優しくも気丈な顔を持っておる。」


そう呟くと、ゼウスもデメテルと共に方法を探すべく部屋を後にした。


～続く～