ハーデスがショックを受けたと同時に、沙織やポセイドン、三界の闘士たちは驚きを隠せなかった。

心清く、優しい葵が他人を拒絶する所なんて見た事が無いからだ。

葵はハーデスに背を向け、布団の中に潜り込んでしまう。

ハーデス以外の冥界勢は、葵の行動の根っこにあるのがエリシオンの事ではないかと気付いていた。

それほど、あの時に彼女が見せた表情は…悲しそうだった。

沙織は何か余程の事があったに違いないと判断し、周りに居た男性陣に告げる。


沙織「皆さん、一度退出して下さいな。」

海皇「アテナ？」

沙織「葵は、きっと怖い夢でも見たのですわ。どんな夢だったのか、私が聞いてなだめてあげないと…。」

冥王「だが、我らとてペルセフォネが心配で…。」

沙織「目覚めたばかりでこんなむっさい男達の集団に囲まれたら、ますます具合が悪くなる一方ですわ。葵の身の上を案ずるなら、まずは静養できる環境作りにご協力くださいませ。」


絶大な黒小宇宙を背後に浮かべ、目が笑っていない笑顔を浮かべるアテナ沙織。

それを見て、男性陣は葵の部屋を出て行かざるを得なかった。

そして、話が聞こえない程度に皆の小宇宙が遠のいてから、沙織はベッドの端っこに座った。


沙織「葵、皆さんがお部屋から出て行きましたよ？　安心なさい。」

「ぐすっ…、ほんとう？」

沙織「あら、私が葵に嘘をついた事があって？」


沙織がおどけて言うと、葵も布団から出てくる。


沙織「葵、この間から様子がおかしいと思っていたのですが…。冥界にお使いで行った時に何かあったのでしょう？　だから、大好きなハーデスを拒絶したのでしょう？　怒らないから、私だけに教えてくれないかしら？」


葵は最初戸惑ったが、優しい姉の笑顔を信じて全てを打ち明けた。