そして、葵と双子神、三巨頭がハーデス神殿へ到着した。

ハーデス付きのニンフに問うと、今は中庭に居ると言う。

そのニンフにお礼を言って、皆が中庭に入った。

視界にハーデスの姿が見えて、葵は彼の名を呼ぼうとした。

しかし………。


「ハー…∑！？」


葵の表情が固まった。

不審に思った双子神と三巨頭がハーデスを見やると、彼らの表情も固まってしまう。


タナ「コレは一体…。」

ヒュプ「どういう…！？」


三巨頭に至っては言葉も出てこなかった。

そこには、ハーデスと１人の美しい女性が中庭の東屋で休憩し、仲睦まじそうに話している姿があった。

２人は寄り添いあうように、楽しそうに話している。

その女性はニンフではなさそうだ。

ニンフも美しい娘ばかりだが、同性の葵から見てもとても麗しい女性。

傍に居なくてもわかるほどの美貌と品の良さ。

葵の心は軋むように痛んだ。


（ハーデス、とっても楽しそう…。）


葵が押し黙ってしまい、双子神は心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。


ヒュプ「ペルセフォネ様…？」

タナ「一度、出直しましょう？」


微かに彼らの声が耳に届き、葵は我に帰った。

見上げれば、自分を心配そうに見ている双子神と三巨頭。


（ダメ、皆を心配させちゃダメ…！）


葵は自分に出来る限りの理性を振り絞り、必死に笑顔を作った。


「ハーデス、忙しそうだね。」

ラダ「ペルセフォネ様…。しかし、あれはっ。」

「ハーデスも、たくさんの人とたくさんお話して、冥界を良くしなきゃいけないから…。」


我慢しているのが良くわかる。

葵は手にしていた親書をヒュプノスに手渡す。


「せっかく、お姉ちゃんがお泊りしても良いって言ってくれたけど、帰るね？」

アイコ「待って、葵。コレは何かの間違いだっ。」

ミー「そうです。ハーデス様が貴女以外の女性とこんな…。」

「いいの。双子神、三巨頭をちゃんとジュデッカに帰してあげてね？　じゃあね。」


葵はそのままハーデス神殿から出て行き、エリシオンから一気に聖域へテレポートしてしまった。